後悔しない認知症

認知症の高齢者は脳トレよりも楽しく生きることが最も大切

「機嫌よく、楽しく生きる」が最も大切(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 このコラムで以前も紹介した知人の母親について、新しいエピソードがある。

 現在92歳で一人暮らし。介護ヘルパーの訪問はあるものの、認知症の症状はない。先日の日曜日、近所に住む知人が母親の家を訪れたところ、開口一番こう尋ねてきたそうだ。「ノックオンていうのは、どんな反則?」。若いころからスポーツ観戦が大好きだった彼女は、ワールドカップ日本開催を機に92歳にしてラグビーにハマってしまったのだ。

 新聞は隅々まで読み、好きな時代小説を読み、スポーツ観戦は相撲、野球、テニス、ゴルフと何でもござれの日々に、新たにラグビー観戦が加わったわけだ。わかりにくいラグビーのルールに挑戦となれば、脳が怠けるヒマもないだろう。こうしたレクリエーションを通じての脳の活動こそが、認知症の進行を抑えたり、遠ざけたりする。「レクリエーション」には、「気晴らし」のほか「再創造」とか「壊れたものがつくり直される」といった意味もある。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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