膵がんを知る

発症リスクを上げる6つの要因<2>慢性膵炎は13.3倍高くなる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 膵臓の病気も膵がんのリスクを高めます。例えば慢性膵炎での膵がんの発生リスクは13・3倍です。むろん、慢性膵炎と診断されて2年以内では、まだ見つかっていない膵がんの影響で慢性炎症症状が出ている可能性があります。そこで、診断から2年以上経過した膵がんの症例を集めて分析したところ、同様の結果が報告されており、信頼性が高いと考えられています。

 慢性膵炎とは、膵臓に繰り返し炎症が起きて膵臓が硬く小さくなり、消化液やインスリンなどが出にくくなった状態をいいます。急性膵炎は初めてならすぐに治りますが、これを何度も繰り返したり、お酒を飲み続けていたりすると、慢性膵炎になります。慢性膵炎の原因は飲酒、特発性(原因不明なことを指す)、胆石です。そのため、飲酒と胆石は膵がんの発症リスクでもあります。

 長年治療を続けてこられた慢性膵炎の患者さんの中には、ある日突然、「痛みがなくなりました」と言われることがあります。しかし、これは痛みも感じないくらい病気が進んだということです。誤解しないでください。

 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)というのは嚢胞性膵腫瘍という膵臓にできる腫瘍のひとつで、最近多く発見されてきているものです。

 膵臓から十二指腸に向かう膵管にブドウの房のような腫瘍ができるものです。腫瘍が主膵管全体にわたる主膵管型と枝にできる分枝型に分かれますが、これらの病変からがんに進展していくことが欧米でも注目されており、注意が必要です。見つかったときは定期的にCTやMRI検査を受け続けましょう。

 喫煙は膵がんの発生リスクも高めます。喫煙による膵がんの発生リスクは1・86倍で、1日の喫煙本数が増えれば増えるほどそのリスクは高くなります。喫煙は遺伝性膵炎や肥満などのリスクを増加させることもわかっています。大量飲酒は膵がんリスクをアップさせます。1日の飲酒量がエタノール換算で37・5グラム以上では膵がんの発生リスクを1・22倍アップさせることが報告されています。ただし、それ以下の飲酒については目立った膵がんアップは見られません。

 面白いのは、O型以外の血液型も膵臓がんのリスク要因とされていること。米国の国立がん研究所が発表した論文では、O型が膵がんになるリスクを1とした場合、A型は1・32倍、B型は1・72倍、AB型は1・51倍になると報告しています。ABO式血液型を決定する領域における遺伝的変異が、膵がんリスクと関連するからです。

 また、さまざまな臓器に影響を与えることがわかってきた歯周病も、膵がんに影響するといわれています。歯周病菌の代表的な菌であるギンギバリス菌の保菌者は1・6倍、同じ歯周病菌の一種であるアクチノミセテムコミタンス菌の保菌者は2・2倍、膵がんリスクが高くなるという研究発表もあります。

 他にピロリ菌感染の人、胃潰瘍の経験のある人やB型肝炎ウイルス感染者も、膵がんリスクが高まるといわれているのです。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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