役に立つオモシロ医学論文

専門誌で解析 親身な医師に診てもらうと患者は長生きする?

親身に接してもらうと、健康状態に良い影響が
親身に接してもらうと、健康状態に良い影響が

 高血圧や糖尿病など慢性疾患の治療においては、長期間にわたり医療機関を受診し続けるケースも多いでしょう。医師と患者の関係も年単位で続くことはまれではありません。継続的な治療を円滑に進めるうえでも医療者との人間関係は軽視できない問題です。

 患者に対する医療者の共感度と、患者の健康状態の関連性を検討した研究論文が、家庭医療学専門誌の2019年7・8月号に掲載されました。

 この研究では、糖尿病と診断された英国在住の628人(平均61歳、男性60%)が対象となっています。被験者に対して、糖尿病の診断から12カ月の間にアンケート調査を実施し、医療者(医師、看護師)の患者に対する共感レベルが評価されました。共感レベルは3段階に分けられ、心臓病の発症リスク及び死亡のリスクが比較検討されています。なお、診断時の年齢や性別などの因子で統計的に補正して解析されました。

 解析の結果、死亡のリスクは、医療者の共感レベルが最も低かった患者と比較して、中等度の共感レベルでは51%有意なリスク低下が、最も高い共感レベルでは40%リスクが低下する傾向にありました。また、心臓病の発症リスクは統計学的な有意差はありませんでしたが、共感レベルが高い患者で3割ほどリスクが低下する傾向にありました。

 この研究では医療者が患者に対して親身に接することで、患者の健康状態に良い影響を与える可能性が示唆されています。医療者との関係性が良好であることによって患者自身が治療に対する関心を高め、食事や運動などの生活習慣、喫煙や飲酒習慣の見直しや、しっかり薬を飲むようになるなど、行動変容が促されるのかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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