それでは後輩たちの中に「あの人のマネをしてればいいや」という意識が芽生えてしまいます。しかし、あれは彼に任せる、これは彼に任せる……と責任を分担すれば、彼らが目指す方向性や選択肢が増えることになります。
ですから、今は「自分はやらないから、君がやってくれ」というスタイルで、メインで取り組む治療を振り分けています。たとえば、大動脈瘤に対する「ステントグラフト内挿術」がそうでした。ステントグラフトと呼ばれる中にバネを入れた人工血管を動脈瘤部分に留置して破裂を防ぐ治療法です。すべて後輩に任せることにして、自分は今もまったくタッチしていません。
そのかいあって、任せた医師は順調に成長し、さらに若い後輩たちを指導する立場になりました。それなりにきちんとこなせる医師を何人も育てています。後輩に任せた当時の自分の決断は正しかったと思っています。責任をシェアされた者たちの自覚が、また新しいものを生むのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」