膵がんを知る

膵がん早期発見のカギを握る画像検査 CTとMRIの違いと特性

最新ガイドラインは造形CT検査
最新ガイドラインは造形CT検査(C)共同通信社

 膵がんが治りづらい理由は早期発見が難しいからです。実際、Ⅰ期で見つかるのは6%程度で、他のがんに比べてはるかに発見しづらいことが知られています。その理由は体の中心にあって見つけにくいこと、痛みの受容体が少なく自覚症状が乏しいこと、膵がんだけに表れる症状がないことなどが挙げられます。

 では、現在はどのようにして膵がんを見つけているのでしょうか?

 膵がん検査は3段階に分かれて行われます。第1段階は血液検査と腹部超音波(エコー)検査です。血液検査では膵臓の働きを示す膵酵素の測定と膵がんが発生したときに上昇することがある腫瘍マーカーの動きを調べます。ただし血液には膵がん特有の動きがないため、必ずしも正確には見つけられません。エコー検査も費用が安く患者さんへの体の負担が少ないものの、肥満や腹部の中のガスの状況により、観察しづらいといわれています。

 第3段階の病理検査の前の第2段階は画像検査で、造影剤を使ったCT(コンピューター断層撮影)検査とMRI(磁気共鳴画像法)検査に大別できます。

 CT検査は人体にX線を照射し、その透過量をコンピューターが解析して人体の輪切り像(横断面)をつくる装置です。単純X線撮影と同じように骨は白く映り、被曝します。

 CT検査は造影剤を使用することでその効果を発揮します。鮮明な画像が得られ、がんの広がりや血流も把握しやすくなります。近年は1回の照射でさまざまな角度からの断面図が得られるマルチスライスCTが登場し、画像ソフトにより3D画像も得られるようになりました。短時間で繰り返し撮影して血流の変化やがんの浸潤の様子も観察できるダイナミックCTという撮影法も使われるようになり、精密度が増した最新CTでは造影剤なしでも膵がんの状況や血流の動きを観察できるようになっています。

 MRIは強い磁力と電波を体にぶつけて、体内の水素原子を揺さぶりそれを画像にする装置です。被曝はしません。粘膜の動きもわかるのでがん検査としては適しています。しかし、検査時間が長く、妊娠している人などは検査できません。心臓などにステントが入っている人など検査できない場合があります。

 ただMRIはCTとは異なり、造影剤を使わなくてもそのコントラスト分解能の高さから、内臓や粘膜、血流の情報が得られるメリットがあります。

 膵がんの多くは膵管に発生するため、膵液や胆汁という液体成分を抽出して調べるMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)も有用です。MRIで得られた画像情報をコンピューターで3次元構築するもので、膵がんの前駆病変であるIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)やMCN(粘液性嚢胞腫瘍)が発見できます。

 ちなみに「膵がん診療ガイドライン2019年版」は膵がんが疑われたときの造影CTの推奨の強さは「強い」、エビデンスの確実性は「B(中)」に対して腹部MRIの推奨の強さは「弱い」、エビデンスの確実性は「C(弱)」としています。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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