医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

尿潜血「+」は医師も警戒 「様子を見ましょう」は再検査

偽陽性のときも再検査は欠かせない
偽陽性のときも再検査は欠かせない

 尿タンパクの見極めは尿潜血とセットで考えると、前回お話ししました。

 その尿潜血は、「-」が異常なし。「+-」「+」が要注意、「2+以上」が異常です。尿タンパクは、要注意の「+」でも問題ないケースも珍しくなく、それなら「様子を見ましょう」はそのまま受け取れますが、尿潜血の要注意結果は、少し緊張します。

 要注意のレベルだと、目で見えるような赤い尿(肉眼的血尿)であることは、ほとんどありません。見た目は正常で、テステープという試験紙に尿をさらしてはじめて血が混ざっていることが分かるレベル。それが尿潜血です。

 健康診断などで尿潜血「+」が出た人が受診したら、医師は何を疑うかというと、真っ先に思い浮かべるのは、腎臓、尿管、膀胱、尿道など尿路の異常です。尿路結石や膀胱炎をはじめとする感染症、糸球体腎炎、外傷、尿路に生じたがんなどです。加えて、白血病や膠原病、溶血性貧血、心筋梗塞などでも、潜血は見られます。

 背景にある病気が幅広い上、見逃すと生命の危機になるような病気も少なくありません。医師も、気を引き締めて診察にあたるのは、そのためです。

 本当は陰性なのに陽性と判定される偽陽性の「+-」もあります。筋線維が損傷するような激しい運動の後や生理直後には、筋肉中から尿中に放出されるミオグロビンがヘモグロビンと似たタンパク質で、テステープが誤って反応して、陽性と判定することがあるのです。

 背景にいろいろな見逃せない病気が潜んでいるときも、偽陽性のときも再検査が欠かせません。尿を遠心分離(沈渣)して、顕微鏡で観察。赤血球のほかに白血球はないか、尿路結石を起こすような異物や細菌感染がないかをチェックします。この検査は尿沈渣と呼ばれ、専門の検査技師がみれば、赤血球の形で出血の場所が腎臓なのか、そうでないか判別。尿の中にがん細胞が混じっていることもあり、膀胱がん発見のキッカケになることもあります。

 腎臓学会の調査によると、陽性になるのは毎年約500万人。そのうちがんが見つかる確率は0・5%程度、200人に1人。膀胱がんは、顕微鏡的血尿で診断される悪性腫瘍の中で最も多いがんなのです。

 それでも異常がなければ「様子を見ましょう」となりますが、1年後の再検査は決して忘れてはいけません。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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