生活と健康 数字は語る

「推定」による信頼区間は実際の減少の幅が示され実用的

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 統計学的な検討方法として、危険率と有意水準による「検定」の方法について説明してきましたが、もう一つ「推定」という方法があります。

「検定」が危険率と有意水準で示されたのに対し、この「推定」は信頼区間という形で示されます。

 推定による信頼区間を用いた統計学的検討も、基盤の考え方は「検定」と同じです。同様な標本調査を行ったとき、100回のうち95回の結果が含まれると推定される範囲を95%信頼区間と呼びます。これは有意水準5%に対応した結果の示し方です。さらに100回のうち99回が含まれる範囲になると、99%信頼区間と呼び、有意水準1%に対応するわけです。

 実際に男性の喫煙率が39%から29%に減少したという国民健康・栄養調査のデータを使って、95%信頼区間を計算してみると、8%から13%と計算されます。20回の調査のうち1回はこの範囲から外れた結果が起こるわけですから、この範囲が0を含んでいなければ、つまり喫煙率が減少しないか増加する場合が20回に1回未満ということになり、有意水準5%で統計学的に有意な減少といえます。

 信頼区間は実際の減少の幅が示されるため、危険率に比べてより実用的な面があります。喫煙率の減少は少なく見積もって8%、大きく見積もれば13%というように読めるわけです。少なく見積もっても8%減少ということなら、標本調査の結果とはいえ、減ると判断したほうがよさそうです。

 医学論文の世界では、有意水準5%の「検定」から95%信頼区間を重視する「推定」を用いた記載に変わりつつあります。危険率は効果の大きさを示していないが、信頼区間は実際の効果を見積もることができるという点で、やはり後者が優れているという判断なのでしょう。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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