がんと向き合い生きていく

余命を一度も口にしたことがない担当医に感謝する患者の思い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 会社経営者のTさん(66歳・男性)は、10年前に受けた人間ドックで腫瘍マーカーの数値が高いことを指摘され、A病院で検査を受けました。その結果、肝硬変で、肝臓がんができていることが発覚。以来、ずっとA病院の消化器内科で通院治療をしてきました。担当のM医師は口数は少ないのですが、一生懸命に治療してくれます。

 肝臓がんは数カ所に及び、皮膚から針を刺してがんの部分を焼き殺す「ラジオ波熱凝固療法」をこれまで5回行いました。他には「肝動脈塞栓術」という治療も受けました。

 今回は、がんの一部が大きくなってラジオ波での治療は無理だと判断されましたが、部位が肝臓の端だったことから、手術で切り取ることを勧められました。

 手術前、肝硬変のために出血が止まらなくなる、肝不全になるなど、重篤なリスクをたくさん説明され、Tさんは一時は手術しない方に気持ちが傾きかけました。しかし、このままでは命が危ないことも分かっており、リスクがあっても手術してもらうかどうか迷っていたところ、M医師が肝臓外科の医師を紹介してくれて説明を聞くことになりました。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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