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「赤身肉と加工肉は体に悪くない」研究結果に米国で大論争

アメリカ人が最も愛する赤身肉
アメリカ人が最も愛する赤身肉

 アメリカでは、牛肉などの赤身肉は悪玉コレステロールを増やし心臓病などの原因になるとされてきました。

 ところが今回、「赤身肉は体に悪くない」という研究結果が発表され、大論争になっています。

 そもそも赤身肉はハンバーガー、ステーキなどアメリカ人が最も愛する食アイテム。ところが赤身肉のリスクが指摘されるようになり、近年の研究では「ベーコンなどの加工肉が、がんのリスクを上げる」と判明。米国心臓協会、米国がん協会、さらには米国政府の栄養摂取ガイドラインでも、赤身肉や加工肉は控えるように呼びかけられていました。つまりアメリカ人にとって、赤身肉や加工肉は“好きなのに我慢しなければならない食べ物”だったわけです。

 ところが今回それを覆す研究結果を掲載したのが、米国内科学会発行の医学誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」。カナダのマクマスター大学とダルハウジー大学などが共同で、数多くの調査結果をもとに系統的レビューを行ったところ、赤身肉や加工肉の摂取と、心臓病やがんの間の関連性は非常に低いという結果になったのです。そこで「赤身肉も加工肉も今と同じように食べ続けても問題ない」と発表したため、驚きとともに「では今まで我慢したのは何だったんだ?」という疑問と混乱が生まれています。

 医療関係者らは「これまでのさまざまな研究結果から、赤身・加工肉のリスクに関してはある一定の信憑(しんぴょう)性が認められている。それを無視してまったく問題ないと受け取られるような発表は無責任」などと反論。

 実は赤身肉に関しては、健康への影響とは別の論争も大きくなっています。「劣悪な環境での牛の成育が動物虐待に当たる」「畜産から地球温暖化の原因となる大量の温室効果ガスが発生している」などと問題視され、先日行われた若者による世界同時の大規模な環境デモでも攻撃の対象となっていました。

 こうした現状を含め、肉をめぐる攻防はますます激しくなりそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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