Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

子宮頸がんと中咽頭がんに共通 "口腔奉仕"で若者に急増中

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夫婦関係に溝を生みかねない子宮頚がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。HPVは、セックスで感染しますから、子宮頚がんだけでなく、男女どちらにも病気を起こす恐れがあるのです。

 女性は子宮頚がんのほか、外陰がん、膣がんのリスクもあります。男性が感染すると、どんな病気になるのかというと、尖圭コンジローマ、陰茎がん、肛門がんです。

 中でも見逃せないのが中咽頭がんで、その7割はHPV感染が原因といわれます。咽頭がんのリスクとしては飲酒と喫煙がありますが、これらを原因とする咽頭がんは減少傾向で、HPVによる中咽頭がんが若者を中心に増えているのです。なぜかというと、セックスの低年齢化とオーラルセックスの定着です。子宮頚がんの発症ピークが30代ということからも、セックスの影響がうかがえます。

 いずれもHPVウイルスが感染源ですから、ワクチンを接種すれば、発症を抑えることができます。ところが、日本は副反応問題で、接種率はわずか0・3%。接種率7~8割の欧米は、患者数が減少し、子宮頚がんは過去のがんになりつつありますが、日本は増えているのです。最新のワクチンなら、子宮頚がんの9割を食い止めることができます。

 家族の形を守るためには、男性も女性もHPVワクチンを接種することが大切です。

3 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事