3つの病気に注意 「視力」が悪い人は認知症リスクが高い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 視力に問題がある人は、認知症に要注意。発症リスクが高いというのだ。東京女子医科大学眼科の飯田知弘教授に聞いた。

 視力と認知症の関連を調べた研究がある。それによると、加齢に伴い「視力0・7未満」の人が増加するが、それが認知症の増加の様子と似通っているのだ。

 また、「視力良好の人」と「視力不良の人」で認知症患者の割合を調べた研究では、視力良好2631人中、認知症患者数は135人で占める割合は5・1%。一方、視力不良187人中、認知症患者数は25人で13・4%を占めた。 

「視力良好の方が認知症は少なく、視力不良では認知症になりやすい。オッズ比(ある事象の起こりやすさを2つの群で示す統計学的な尺度)で見ると、視力が悪い人は視力が良好な人の2~3倍、認知症になりやすい」(飯田教授=以下同)

 認知症にはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症などいくつか種類があるが、これらの研究では、そこまで詳しく分けていない。

 しかし、いずれにしろ、認知症対策のためには視力を維持することが重要だということ。加齢で視力が落ちるのは、老化のほか特有の病気も疑われる。後者の場合、治療で視力を取り戻せる可能性がある。つまり、認知機能の改善が期待できる。

「加齢で発症リスクが高くなる目の疾患は、主に3つあります。白内障、緑内障、加齢黄斑変性です」

 たとえば、白内障は目の中のレンズの役割をする水晶体が濁って見えづらくなる病気だが、手術で濁った水晶体を取り除き、人工の水晶体を入れて視力を取り戻すと、認知機能が改善することが研究で確認されている。治療法がないのなら別だが、白内障、緑内障、加齢黄斑変性はいずれも治療法があるのだから、利用しない手はない。

■片目の視力が悪くてももう片方で補うので気づきにくい

「問題は、一方の目が白内障や緑内障、加齢黄斑変性を発症していても、もう一方の目で視力を補ってしまうため、患者さん本人がなかなか気づかない点です。気がついたときには相当進行しているケースも珍しくない」 緑内障や加齢黄斑変性では、落ちた視力は元に戻せない。

 対応が遅れれば、視力を失ってしまう可能性もある。「新規に視覚障害認定を受けた18歳以上の視覚障害者」(2015年)のうち、緑内障はトップで28・6%。加齢黄斑変性症は8%で第4位だった。視力が著しく落ちてから後悔しても遅い。

 では、どういう「見え方」の場合、病気を疑うべきか?

「白内障は、『もやがかかって見える』『ものがかすんで見える』『明るいところでまぶしくて見えづらい』などが初期症状です」

 最初は点眼薬で対応。本人が「生活に支障がある」「もっとよく見えるようになりたい」と思った時が、手術のタイミングだ。

 緑内障は視神経が圧迫される病気で、最初は一部が見えなくなる「視野欠損」がある。次第に消えている箇所に加え、ぼやっとしたかすみが出現し、末期になるとハッキリ見える部分がどんどん狭くなっていく。治療は点眼薬、レーザー治療、手術などがある。

 そして、加齢黄斑変性は、物を見る上で重要な網膜の中央に異常が生じ、「見たいところが見えない」ようになる。

「『新聞の読もうとしている部分がぼやける』『料理で包丁で切ろうとしているところがぼやける』などです」

 国内では2004年に光線力学的療法、08~09年に抗VEGF薬療法が登場し、これらを組み合わせた治療で視力低下を防ぐことができるようになった。

 だから、最も重要なのは早期発見だ。40歳を越えたら定期的に片目ずつ見え方のチェックをし、おかしいと思ったらすぐに眼科へ。

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