独白 愉快な“病人”たち

超早期で見つけてもらえて…魔夜峰央さん食道がんを語る

魔夜峰央さん
魔夜峰央さん(C)日刊ゲンダイ

 この4月、1年ぶりに胃カメラの検査を受けたら「食道がん」が見つかりました。検査のとき「怪しいものがある。検査して何か出たら電話します」と言われ、電話がこなかったので安心していたのに、翌5月に受診したら医者が妙に口ごもりながら、「もっと解像度の高いカメラで検査してください」と言うんです。ヒョイとカルテを見たら、「食道がん」と書いてありました。

 名医が家の近くの病院にいるというので紹介してもらいました。その名医が「よく見つけましたね」と言うぐらいの超早期で「ほとんどステージ0」でした。自覚症状がなかったのに見つけてもらえてついていました。見逃されていたら、次に検査を受ける予定の1年後にはどうなっていたか……。

 6月9日に入院し、翌10日に内視鏡手術を受けました。その6月の終わりに「劇場版パタリロ!」が公開されるんでスケジュールが詰まっていたんですけど、たまたまその週は空いていたんです。これもついていました。

 手術では食道のどのあたりかよくわかりませんが、表面の組織をちょうど500円玉1回り大ぐらいの大きさで薄く切り取りました。手術後は痛くて声が出せませんでしたが、15日に退院して18日にはNHKの昼の生放送の情報番組「ごごナマ」に出演しました。声は前日まで出なかったのに、本番当日に出るようになって。本番に強い(笑い)。

 ほかには、食事のときのみ込めなくて吐き出したことも何回かありました。でも、それも1カ月ぐらいでなくなりました。7月1日に聞いた手術後の検査結果で、「がんは全部取れました。大丈夫、完治です」と言われ、ひと安心です。

 食道がんは、お酒、たばこ、加齢、ストレスが原因らしいですが、お酒は当初の3週間は禁酒して、今は週1~2回、外で食事するときだけは飲んでいます。自宅では飲みません。たばこは1日5~6本。お酒、たばこをやめたら絶対にがんにならないわけではないし、楽しみをすべてやめたら、かえってストレスになりますよ。

 実は1回免許を取れば一生やっていける医者を信用できなくて、病院は3年前までまったく行かなかったんです。おとなしく検査に行くようになったのは、お酒の飲み過ぎで体調不良になり、娘(バレリーナで漫画家の山田マリエ)に泣いて「病院に行って」と頼まれたからでした。当時の私は立食パーティーでは立っていられず、平衡神経をやられて真っすぐ歩けず、手が震え、顔は青黒くなっていたんです。そういう状態が2~3年続いていました。

■お酒で体を壊して定期的に検査を受けるようになった

 娘に泣かれて病院へ行き、血液検査をしたらγ―GTPが1230IU/Lというハイスコア(正常値は10~50)を叩き出しました。それでも、自宅療養してお酒を控えたら、4カ月ぐらいで正常値に戻りましたよ。今は70ぐらい。ベッドに横になっていたのは2週間だけで、その後は普通に仕事をしていました。

 お酒はオヤジが強くて、私も強い。3年前に酒量を減らす前は、20年ぐらいずっと毎日ウイスキーをボトル1本半ほど空けていました。昼ごろに起きて、午後3時から9時ぐらいまで仕事して、それから食事しながら飲んで、午前2時ぐらいに寝る生活。食事は1日1回なので、ちゃんと食べながら飲んでいました。運動不足にならないよう、筋トレやバレエをやってきました。

 ただ、14年ごろから“冬の時代”になったんですね。出版不況になって漫画も売れなくなり、経済的に非常に厳しくなっていました。飲んで、そのつらさを忘れようとしていたんだと思います。

 飲むばかりでだんだん食べなくなり、体重は52キロまで落ちてしまった。さすがに奥さんも心配していましたけど、「今はしょうがない」「必ず良くなる」と、私自身は心配していなかったんですよ。

 でも、お酒で体を壊したおかげで、毎月通院し、血液検査と尿検査を受け、胃カメラなどの検査も定期的に受けるようになりました。だから食道がんが超早期で見つかった。何が幸いするかわからないですね。

 胃カメラ検査は点滴で麻酔を入れてもらいながらやれば、まったく苦しくない。

「まだ始まらないのかな」と思っていたら、「とっくに終わりました」と言われたことがあります(笑い)。検査はぜひ受けることをおすすめします。症状が出る前に!

 9月6日に3年ぶりに大腸カメラの検査を受けたら、「前回3ミリだったポリープが6ミリと少し大きくなっている」と言われ、来年頭ぐらいに切り取る予定です。がん化する可能性があるので予防のためです。でも、1泊2日の入院で済むそうですよ。 (聞き手=中野裕子)

▽まや・みねお 1953年、新潟市生まれ。73年に少女漫画誌「デラックスマーガレット」(集英社)でデビュー。78年から連載中の「パタリロ!」(白泉社)は、アニメ、舞台へと展開され、2019年6月には実写映画「劇場版パタリロ!」が公開された(11月15日にブルーレイ&DVD発売)。また、82~83年発表の「翔んで埼玉」が19年2月に実写映画化され大ヒットした。11月10日まで「北九州市漫画ミュージアム」で「『パタリロ!』100巻達成記念 魔夜峰央原画展」を開催中。

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