医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

高血圧や喘息なら要注意 持病の薬で尿酸値が上がるケース

プリン体は、なかでも多いのがレバーや白子
プリン体は、なかでも多いのがレバーや白子

 お酒を飲む人なら、尿酸値を気にするかもしれません。尿酸値が上昇して、結晶化した尿酸が関節にたまることで発症する痛風は、アルコールやメタボなツマミとの関係が密接ですから。その尿酸値の正常値は7・0㎎/デシリットル未満。なぜそう決まっているかというと、血中に尿酸が溶ける量は決まっていて、その数値を超えると、過剰な尿酸が析出して結晶化しやすいのです。

 ところが、尿酸値が7を超えて8くらいまでは薬を使わず、「様子を見ましょう」と患者さんに告げることが少なくありません。実は、尿酸は肝臓で合成される一方、腎臓から同量が排出されるため、通常、一定に保たれます。そのラインを超えるのは、合成過剰か排出低下、あるいはその両方が考えられます。

 そこで検査では、尿検査などで腎臓に異常がないかチェック。なければ生活習慣を探ります。尿酸値を上げる材料となるプリン体はすべての食品に含まれていて、中でも多いのが白子やレバーなど皆さんご存じの食品です。すべてのアルコールは、体内での尿酸合成を促進します。そんな尿酸値を上げる要素がないか聞いた上で、それでもなければ薬の影響を探ります。

 ありふれた薬の中にも尿酸値を上げる可能性のあるものがあるのです。たとえば、高血圧に処方される利尿薬、喘息治療薬、結核の薬など。

 つまり、尿酸値がイエローラインで「様子を見ましょう」というのは、尿酸値を上げるような生活習慣や薬の影響を取り除いた生活をしばらく続けた上で尿酸値が下がるかどうかを診てみたいのです。

 痛風発作を起こして足を引きずってこられた方に「きのう、飲んじゃいましたか?」とうかがうと、「ビールが好きで」と恥ずかしそうに頭をかきます。ビールは、プリン体の含有量も多く、さらにアルコールの脱水作用も重なって、発作の引き金を引きやすいのです。

 先ほど尿酸が血液中に溶ける量は、ほぼ決まっていると書きました。脱水がよくないのは、血中の尿酸濃度を上昇させるためです。運動などで汗をかくのも脱水ですが、アルコールによる脱水も見逃せません。

 痛風を起こす方は、多飲や食べ過ぎの行動に見られるように、アグレッシブな傾向があります。そういう方にとって、生活改善が難しいのはよく分かりますが、痛風の先には腎障害があります。そうなると、最悪の場合、腎不全で人工透析も余儀なくされます。「様子を見ましょう」といわれたら、少しずつでいいので生活を見直すことです。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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