発達障害などで不登校 それでも出席扱いにできる制度がある

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「発達障害や起立性調節障害(朝起きられないなど)で勉強についていけない」「集団行動が苦手」といった理由で子供が不登校になった時、知っておきたいのが文科省が定める「不登校児の出席取り扱いに関する制度(注)」だ。少・中学生が対象。どういう制度なのか?

 小・中学校は義務教育なので、出席日数は進級や卒業の認定とは関係なく、出席日数ゼロでも、進級も卒業もできる。ただし出席(欠席)日数○△日という事実は残る。高校受験の場合、内申点に影響が出ることがある。

「この制度では、3つのポイントを満たした場合、不登校でも出席扱いとなります」

 こう話すのは、ITを用いた家庭学習サービスなどを行う「すららネット」の佐々木章太室長。この制度はあまりにも認知度が低く、親はもちろん、学校側も知らない。制度のことを知って申請しても、3つのポイントを正しく満たせなかったために、却下されるケースもある。それもあってか、2005年の施行以降、累計286件(2019年10月17日・文科省発表)しか利用例がない。

 3つのポイントとは、①文科省が定義する「不登校」に該当している②文科省の要件を満たした「状況」と「学習教材」である③学校側が定義する「1日の出席条件」を満たす――だ。

「①の不登校の定義は、病気や経済的な理由以外で年間30日以上欠席。『学校の授業についていけない』『人間関係に悩んでいる』などはOKですが、不登校で多い『起立性調節障害で30日以上欠席』は、病気が理由とされNGになる可能性があります。起立性調節障害が欠席理由ではなく、『学校の授業についていけない』であればOKなので、その点について学校と協議することで可能性が出てきます」(佐々木室長=以下同) ②は主にITを活用した学習活動で、6つの条件がある。文科省のHPで確認できる。「多くの学校は自宅でIT教材を使えば出席扱いにできることを知らないので、まずは親が担任の先生に相談してください。その際、文科省の制度のページを印刷して持参するとスムーズに進むかもしれません」

 ①と②は文科省が定める内容に従うものだが、③は学校との話し合いで決まる。出席カウントの条件は、「1日にこれだけできたら」など学習ノルマを決める場合と、「(IT教材に)ログインした日が出席扱い」など学習ノルマがない場合がある。学習教材を決めておく、あるいは「これまで月30時間自宅学習してきた」などといった学習実績があればノルマがなしになる傾向がある。

■学校復帰が目的だと学校に伝えることが重要

「この制度を利用する上で重要なのが、学校復帰が目的と学校に伝えること。制度自体が学校復帰を目的に作られているものだからです。『学校に行けないので出席扱いに』では却下されるリスクがあり、『学校復帰を目的に出席扱いに』と申請する。結果的に学校復帰がかなわなくても出席扱いとされているケースはあるようです」

 不登校になった当初は、子供の気持ちが勉強に向いていない。その状態で親が「勉強」と言うと、心理状態が悪化する可能性がある。タイミングを見て、出席扱いの制度について子供と話し合うことも重要だ。

「私たちが扱った事例では、中1の2学期から不登校のお子さんが、出席日数0日でも修了証書の欠席日数は0日となり、自己肯定感が醸成され元気を取り戻すきっかけになったり、中学時代の不登校時期にITで家庭学習をして出席扱いとなり、高校入学の最初のテストで5教科すべて満点を取ったなど、前向きに人生が進んだケースがたくさんあります」

 不登校は一つの選択。罪悪感を覚える必要はない。一方で、不利益を被らないようにしたい。そのための制度だ。

(注)制度名は「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」

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