後悔しない認知症

注目されている「認知症カフェ」の有効活用術

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 台風一過。久々に晴れた日の朝、自宅近所のコーヒーショップでほほ笑ましいシーンに遭遇した。3人ずつ、おそらく、ふたつの家族と思われる6人が穏やかな表情で談笑している。その2家族は親しい間柄なのだろう。1組は車椅子に乗った90歳前後の男性とその娘とおぼしき60代の女性と30歳前後の女性。もう1組は90代女性、60代男性、そして30代半ばの女性。それぞれ親、子ども、孫の3代と思われた。

 聞き耳を立てていたわけではないが、聞こえてくる会話やその様子から判断して、高齢の2人は認知症と推察された。「あれ、忘れちゃった?」「おばあちゃんわかる?」「今日は何曜日だっけ」などと認知症の親、祖父、祖母に語りかける。決してコミュニケーションはスムーズではないが、一人としてヒステリックな声を上げることはない。認知症と思われる高齢者もそれぞれ「そうだったっけ?」「忘れちゃったよ」などと応えるが、笑みを絶やすことはない。6人それぞれが穏やかな表情でその時間を楽しんでいるように私には思われた。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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