ドクターXが見分ける いい医者いい病院

「教授」「専門医」「学会会員」の肩書は信用できるのか?

写真はイメージ
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 特定の組織や大学医局に属さないフリーランス医師の活躍を描いた「ドクターX」(第6シリーズ)が放映中だ。中山祐次郎さん(39)もそのひとり。手術の腕を磨くために自ら選んだ病院でキャリアを積んでいる、いわゆるフリーランス外科医だ。著書「医者の本音」は14万部のベストセラーになっている。

 ――患者が医者の良し悪しを判別する前に、双方の“相性”の方が大事だということですが?

「良い医者か、悪い医者かは、ラーメンの好みや相性と同じようなものです。医療というのは、医者という人間が、患者さんの個別性を考えて行うものなので、相性が存在します。単純に『こういう医者が良い』とは言い切れませんし、逆を言えば誰に対しても『最高の医者』というのも存在しません。ただ、その定義を超越し、それだけはアカンという医者がいるのもまた事実です」

 ――具体的には、どういう医者なのでしょうか?

「本人の好みや相性とはいえ、ラーメン屋でも不衛生だとか、保健所に届けのない闇営業だとか、そんなところには行きたくないですよね。話を聞かない医者、専門用語だらけで話す医者は能力が低いことも多いと思います。医者や病院も、『医者ログ』のような患者の口コミや評価を比較するサイトがあったらいいのですけれど、残念ながらありません。一度、アプリの専門家と一緒にそんなサイトを作ろうと計画したことがあるのですが、法律的な壁があるため実現できませんでした」 

 ――医者の肩書、例えば教授、専門医、学会会員といったものは参考になるのでしょうか?

「確かに教授は、超人みたいな人が多い。ひと昔前の教授といえば研究分野にたけ、論文が評価されて教授職に就いていました。ところが最近の外科教授は研究分野だけでなく、オペもめちゃくちゃうまい。手術ができない外科教授は、今はほとんどいないと思います。もちろん、なかには手術を不得手とする教授もいますが」

 ――ドラマと似ていますが、専門医の資格を持っている医者は信頼できるのでしょうか?

「専門医の認定はある程度の診療と研究の能力を持ち合わせているという保証だと思います。分かりやすく言えば肉のA5ランクみたいなものですね。とはいえ、必ずしもA5ランクじゃなくてもおいしいお肉はあるので、持っていなくても悪い医者とは言えません。一方、最近は医者をググって(ネット検索して)から受診する患者さんが多くなって、『論文、書いていましたね』と聞いてくる人もいます。これは一般論ですが、専門医の肩書を持つ医者の方が、比較論で高水準だと思っていいと思います。僕がいろいろな専門医資格を持っているから言うのではないですけれど(笑い)」

 ――確かに中山さんは、消化器外科専門医、外科専門医、受験する外科医の4人に1人しか合格しない難関の内視鏡外科技術認定医、さらには感染管理医師、マンモグラフィー読影認定医、がん治療認定医、医師臨床研修指導医などの肩書がありますね。

「資格を取るのはすごく大変です。スタンプラリーに思われるかもしれませんが、専門医資格を取るために勉強を続けると、自分のレベルも上がっていくのが実感できます。知識、経験、技能も増えますし、そもそも、そうでないと専門医の資格も取れないですからね。ただ、『ナントカ学会会員』は会費さえ払えばなれますので、特に目安にはなりません」 =つづく

 (構成=稲川美穂子)

中山祐次郎

中山祐次郎

1980年生まれ。鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院大腸外科医師(非常勤)として10年勤務。現在は福島県郡山市の総合南東北病院に外科医として籍を置き、手術の日々を送る。著書に「医者の本音」(SBクリエイティブ)、小説「泣くな研修医」(幻冬舎)などがある。

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