独白 愉快な“病人”たち

まさに地獄の痛み…鈴木麻由さん語る群発頭痛との壮絶闘病

鈴木麻由さん
鈴木麻由さん(C)日刊ゲンダイ

 2013年の12月末、深夜3時ごろに頭が割れるように痛くなりました。それまでの人生で経験をしたことのない痛さです。頭と顔の右半分が激しく痛み、動くことができない……目の奥が痛いので、目を取ってしまいたいくらいでした。

 30分くらい激痛に襲われてから痛みが少し治まり、でも、また同じ痛みに襲われる波の繰り返し。痛みが和らいだタイミングで常備している痛み止めを大量に服用したのですが、効果はまったくありませんでした。

 右半分の痛みだったこともあり、脳に関する重篤な病気も心配になって朝いちばんで開業医のもとへ行きました。そこで「検査のできる病院に」と紹介状を出され、そのまま違う病院でMRIなどの検査を受けました。その時点でまだ痛みは続いている状態で、MRIの音が頭に響いて、うめき、泣きながら検査をしたことを覚えています。

 ただ、あんなに痛かったのに結果は「特に問題なし」。とりあえず鎮静剤を処方されましたが、症状は改善されませんでした。

 その日はそのまま帰宅して安静にしていました。でも、最初の姿勢から動くことができません。動くたびに激痛が走るのです。病院では異常がないと言われたものの、症状から見るとただごとではなく思えて、翌日、母に付き添ってもらって脳神経科がある順天堂医院に行きました。

 服が顔に当たるだけで激痛に襲われるので、着替えることができずにパジャマのまま……。タクシーの揺れ、顔に当たる風、信号機の光などが激痛につながり、母が背中をさすってくれたその振動さえも痛く、母の手を振り払ってしまいました。

 当初、帯状疱疹が疑われたのですが、結果、先生に「群発頭痛かもしれません」と言われました。原因はストレスです。治療は皮下注射と酸素吸入、座薬の鎮静剤と説明を受けましたが、私の場合はそれらの治療がまったく効果がありません。先生と治療法を模索する中で、三叉神経痛の薬が効くことが分かり、発作時には三叉神経痛の薬と座薬鎮静剤のボルタレンで様子を見ました。

「群発頭痛」という病名はそのとき初めて聞いたのですが、後に調べたところ「世界三大痛」と称される病でした。激痛という言葉では収まらず、「拷問なのか」と思うほどの痛みを繰り返すのです。痛みをどうにか抑えようと、頭を壁に打ち付ける人がいることから「自殺頭痛」とも呼ばれているようでした。ハリー・ポッターシリーズで有名な俳優のダニエル・ラドクリフさんがこの病気を公言なさっています。

 私も同様の症状で、発作が起きたときをたとえるなら、「麻酔なしで歯を全部抜かれた」感じ。あるいは、「鼻をトンカチで叩かれ、耳に電流の棒を刺され、目をえぐり取られ、神経がむき出しになった顔面をノコギリで切り取られているような」……まさに地獄の痛みです。

 ひとたび発作が起こると、少しの振動や光でも痛みが激しくなるので、部屋を真っ暗にして、発作が起きたときの体勢でみじんも動かずにじっとしていました。

 あまりの痛みに当初は声を発することもできませんでしたが、途中からうめき声と泣きじゃくる声がひどかったようで、母がお隣さんに菓子折りを持ってお詫びに行ったとも聞きました。

■薬さえ飲んでいれば仕事はできるようになった

 そんな具合に最初の発作が起こってから3カ月弱は暗い部屋で寝たきりでした。音のない部屋で、薬を飲んで、ただ寝ているだけ。食事をするのも痛いので食欲はなく、半年で10キロも痩せました。ただただ「次の発作はいつ来るのだろう」と怯えるだけで、ふいにやってくる激しい頭痛にぐったりしていました。

 最初の発作から3カ月たってからは症状も少し安定し、1日に5分程度のテレビ観賞、夕方に右目に眼帯をしながら近所を散歩できるようになりました。動悸を感じながらも電車に乗ることに慣れていき、少しずつ少しずつ単発の仕事を再開していきました。

 復帰して最初のころは、無意識に右目から涙が出ている状態で歌っていることもありました。仕事が終わると多めに薬を服用し、ゆっくり休んで、ストレスをため込まない努力をしました。

 飛行機や新幹線での移動も多いのですが、気圧が変化すると顔面の右半分が痛み、右目だけが自動的に引きつってしまうので、仕事の際には痛み止めも多めに服用しています。当初は激痛を覚えたスポットライトや音にもだんだんと慣れていき、5年たったいまでは薬さえきちんと飲んでいれば、仕事はできるようになりました。いまは、仕事ができることの感謝しかありません。

 生死には関わらないものの、こんなに苦痛を伴う病気があることの認識と理解の輪を広げていただければと思います。

(聞き手=池野佐知子)

▽すずき・まゆ 1986年東京都生まれ。歯科助手の仕事のかたわら、定期的にストリートライブを開催。2012年9月放送の「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」への出演をきっかけにものまねタレントに転身。レパートリーは80人以上で、注目の女性ものまねタレントのひとり。

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