男性も知っておきたい女性の病気

子宮頸部異形成<2>勤務先に知られないよう夏休みに手術を

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 30度を超す猛暑日が続いていたこの8月、神奈川県横浜市に住む青山文江さん(仮名=40歳)は、市内の総合病院で「子宮頚部異形成」の手術を受けた。

 その1カ月ほど前、地元の産婦人科病院から「早い手術を」と勧められ、手術設備が充実している総合病院を紹介されていた。

「独身で病気が病気ですから、勤め先には知られたくありませんでした。それで夏休みを利用し、しかも仕事に支障をきたさない土曜、日曜を選択して入院したのです」

 女性特有の病気にはいまだに偏見がある。あるアイドルは子宮頚がんを公表した途端、「遊んでいるからだろう?」とネットで批判された。しかしそれは大きな誤解だ。たった一度の性体験でも罹患することもある。最近は医療関係者の間で、昔に比べて出産することの少ないいまの女性は生理に伴う女性ホルモンの刺激が原因で女性特有の病気が引き起こされるのではないか、との考え方も示されている。

 本来、青山さんは申請すれば医療費の一部を組合が負担してくれる。しかし、偏見にさらされたり、かわいそうと思われるのを嫌った青山さんは手術と2日間の入院費用の7万2000円のすべてを自費で賄ったという。

 近年、20~30代の女性の間で、急速に増加している「子宮頚部異形成」は、子宮頚がんの前段階といわれ、自覚症状のないのが特徴である。青山さんのように、「子宮頚がん」(細胞診)の診察を受けることによって発見されることが多い。

 自然治癒もある。だが、怖いのは治療を怠ると、婦人科のがんではもっとも頻度が高い「子宮頚がん」に進展する傾向が強いことだ。

「手術担当医師からも術前に、“患部を切除することが第一ですが、手術時に、子宮の奥の部分も診ます。腫瘍が広がって、子宮頚がんになっていないかも診断するためです”と説明されました」

 青山さんは、「もう妊娠できないのでは」と、不安に襲われ、泣きべそ顔をした母親に見送られて手術室に入った。

 手術は全身麻酔で、麻酔がかけられてから手術室を出るまで約1時間。内視鏡による手術(子宮頚部円錐切除術)で、子宮の入り口部分の患部を、円錐形に切除した。

 未婚女性で出産を希望している患者が選択する主流の手術である。

「手術後、担当医の先生から、“希望すれば妊娠は可能ですよ”と言われホッとしました。母も胸をなで下ろしておりましたが、正直、私自身は、“妊娠は諦めざるを得ないかな”と思っています。しばらく医師の経過観察が続くと思いますが、不安はまだ残ります」

 手術後、青山さんは父親には「大丈夫みたい」と言っただけで詳しい話はしていないという。

 1カ月後、術後検査を受けたが異常なし。ただ青山さんは「子宮内膜症」と「子宮筋腫」を抱えており、今後も産婦人科医師による経過観察が必要だ。

「私が子宮の手術を受けたことなど、友人も同僚もいまだに知りません。内緒の通院が続きます」

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