ドクターXが見分ける いい医者いい病院

薬を多量に処方する医者はダメなのか?

(C)日刊ゲンダイ

 ――薬を出したがる医者がダメというわけではなさそうですが、そうすると、病院経営のために薬を減らす医者はどうでしょうか?

「医者にとって最大のインセンティブは、『患者さんが良くなること』です。薬が減っても体調が良くなるのであればいいのですが、処方料・処方箋料の減額を回避するために投薬を減らすという医者は少ないでしょう。本当に必要なら、病院経営にマイナスでも処方したいのです」

 ――顧客満足の向上のための投薬、つまり「あの先生は薬も出してくれない」と不満に思う患者もいます。特に開業医にとっては患者の満足度が低ければ客が減り、経営を圧迫してしまいますね?

「患者の満足度は病院経営に関わる重要事項のひとつです。風邪で受診した際、『よく食べて、よく寝てくださいね』と帰されるより、薬を処方してくれる医者の方が圧倒的に満足しますよね。例えば、風邪の患者さんに抗生物質を処方するのは、患者の満足度を上げたい側面が大きいと感じています。ただし、ウイルスが原因である風邪に細菌を殺す抗生物質は効きません。むしろ、むやみに抗生物質を出すと、抗生物質が効かない耐性菌の問題も出てきます」

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中山祐次郎

中山祐次郎

1980年生まれ。鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院大腸外科医師(非常勤)として10年勤務。現在は福島県郡山市の総合南東北病院に外科医として籍を置き、手術の日々を送る。著書に「医者の本音」(SBクリエイティブ)、小説「泣くな研修医」(幻冬舎)などがある。

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