「心腎連関」という言葉があるように、心臓と腎臓は密接に関係しています。糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は血糖をコントロールするための薬ですが、その作用機序によって心腎連関のバランスを整える可能性があるということです。
ただし、心不全の治療薬としてすぐに使えるかどうかについては、まだ様子をみる必要があります。製薬会社の“思惑”が見え隠れしている側面があるからです。
抗がん剤と認知症治療薬を除いて、近年の製薬会社にとって最大のターゲットは心不全です。これから高齢化が進めば、患者が増えるのは間違いありません。製薬会社にしてみれば「この薬で糖尿病の治療だけでなく心不全の管理もできますよ」となれば、大ヒットを望めます。
実は以前にも、DPP―4阻害薬と呼ばれる糖尿病治療薬が心血管疾患に対して有効なのではないかと期待する声がありました。DPP―4阻害薬は、膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させる働きを持つ「インクレチン」というホルモンのひとつGLP―1を分解する酵素(DPP―4)の働きを妨げることで血糖を降下させます。GLP―1には心血管保護作用、DPP―4が分解する分子の中には臓器修復作用があるため、心臓の血管再生に有効だろうと考えられたのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」