男性も知っておきたい女性の病気

子宮筋腫<1>患部の大きさが8センチを超えると手術の対象に

世代間ギャップで…
世代間ギャップで…

 日本を脱出して海外で好きな仕事をしたい――。

 都内の情報機器会社に勤める河野有希さん(仮名=36歳)は、そう思うようになっていた。いまの仕事や生活に不満があるわけではない。結婚して白髪が目立つ両親に孫を抱かせてあげたい気持ちもある。しかし、付き合っていた男性に頼りなさを感じていたし、昨年、「子宮筋腫」が見つかったことで漠然と結婚しても子供を産めないかもしれないと思っていた。それなら思い切って、子供の頃からの夢だった欧州での生活にチャレンジしてもいいかもしれないと考えたのだ。

 子宮を形成している筋肉の一部が増殖する「子宮筋腫」は、「30歳以上の女性の約20~30%がかかる」という良性の腫瘍である。

「自覚症状はまったくありませんでしたが、昨年夏に受けた『人間ドック』で、子宮筋腫ありと診断されたのです」

「子宮筋腫」や「子宮内膜症」「子宮頚部異形成」といった女性特有の病気は、家族や友人に相談しにくいという人もいる。医師の診察にしても、20代の若い女性が下着を脱ぐ恥ずかしさから、出血、貧血、痛みなどの症状が重くなる場合もある。しかし、大半の女性は有希さんのように友人に相談するなどして情報を集め、より良い治療を受けるために女性医師などを探すという。

「子宮筋腫」と診断されてから半年が経過し、再検査を受けた昨年暮れには、患部は8センチぐらいまで成長していた。患部の大きさが8センチを超えると手術の対象になると有希さんは主治医に聞いていた。

 ただし、手術のやり方は「子宮筋腫」ができている場所によっても異なる。

「粘膜下筋腫」(子宮の内側)、「筋層内筋腫」(子宮の筋肉の中)、「漿膜下筋腫」(子宮の外側)に分かれる。手術は「子宮全摘」(性交渉は可能だが自然分娩は不可)、「筋腫核出術」(腹腔鏡下手術が主流で筋腫だけを除去。妊娠は可能)などがある。

「私の場合は『月経過多になりやすいし、慢性的な貧血にもなっていますので早い手術を勧めます』と言われました」

 年が明けて、早期に腹腔鏡下で手術できる病院を探した。

「腹腔鏡下にこだわったのは痛みと傷痕を気にしたからです。リストアップした中で、『手術は開腹』と説明された病院や、腹腔鏡下でも手術が半年後で入院費用も高額だった病院は除外しました。半年かけてようやく希望通りの病院が見つかりました。担当の女医さんは丁寧で印象も良く、私自身はここでお願いしようと考えていました」

 ところが、母親が反対した。世代間ギャップで腹腔鏡下手術に懐疑的だったうえ、その病院の系列施設で十数年前に腹腔鏡下手術で医療ミスがあったからだ。母親は当時のニュース記事などをメールで送り付け、「本当に大丈夫? 手術後、子供はちゃんと産めるの?」と強く翻意を促した。

「私は、病院やスタッフもいまは違うから問題ないと説明したのですが、聞き入れてもらえませんでした。年齢的にも子供を持つのは難しいと考えていた私は、ならば早く手術を終えて、将来についてゆっくり考える時間を持ちたいと思っていたのです。ところが、母はそんな私をわがままだと思っていたようでした」

(つづく)

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