歯の疑問 ずばり解決!

インプラント治療で大切なのは資格よりも医師との信頼関係

歯科医師側の、“質問を自由にしてもらえる雰囲気”づくりが大事
歯科医師側の、“質問を自由にしてもらえる雰囲気”づくりが大事

【Q】かかりつけの歯科医院でインプラント治療をしたいと思っています。歯科医は資格が必要なのでしょうか?

【A】専門的な免許は必要ないため、歯科医師免許があればインプラント治療は行うことができます。

 以前、「公益社団法人日本口腔インプラント学会」の専門医は、技術と知識を有している証明だとお伝えしましたが、これがないとインプラント治療が行えないというわけではありません。

 インプラント治療は長期間の良好な予後が報告される一方で、失敗やトラブルも報じられていますし、NHKでも問題点が大きく取り上げられました。

 大事なのは患者さんと歯科医師との信頼関係であり、専門医に処置を依頼できたとしても信頼関係が築けるとは限りませんし、専門医でなくても信頼できる先生に依頼できれば良好な治療結果を得ることも可能だと思います。その意味で、かかりつけの歯科医院でインプラント治療を受けることは、むしろ理想的かもしれません。

 インプラント治療の途中で、当院に転院してこられた60歳の女性患者さんがいます。前医は有名なインプラント専門医でした。

 しかし毎回、質問することをメモ帳に書いて持参しても、一方的な専門用語での説明が大半で理解できず、ただただうなずくだけ、という感じだったそうです。勇気を出して再質問したら歯科医師との関係にヒビが入るのでは……という危惧からうなずくだけになってしまったのでしょう。そのまま治療を進めていくことに限界を感じ、当院にいらっしゃったわけです(ちなみに、たとえ治療途中でも続きを別の医院で受けることは可能です)。

 本来は、患者さんの疑問や不安材料をすべてクリアにして処置を進めるのが理想的なのです。患者さんが質問する勇気も大事ですが、むしろ歯科医師側が“質問を自由にしてもらえる雰囲気”をつくるのが大事だと思います。信頼関係の構築なしで治療を進めたら……トラブルがあった場合の責任は歯科医師にありますが、実際に傷つくのは患者さん本人だということをお忘れなく。

(構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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