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シメジのうま味を濃縮して疲労回復

シメジの炊き込みご飯(右)とホイル焼き
シメジの炊き込みご飯(右)とホイル焼き(C)日刊ゲンダイ
旬を食す<4>シメジ

 いまが旬のシメジは良いダシが出るうえ、安価ですから、使いやすい食材です。

 大きく分けて、ホンシメジとブナシメジがありますが、味が濃いのはホンシメジの方。シメジは冷凍保存も可能です。

 栄養も豊富です。カルシウムの吸収を助けるビタミンD、疲労回復に役立つビタミンB2、胃腸を整える食物繊維などが豊富に含まれています。

 今回はシメジを使って炊き込みご飯とホイル焼きにしました。

 通常の炊き込みご飯は得てして、塩分過多になりがちです。しかし、ご飯と一緒に炊き込む食材のうま味を十分に引き出す、濃厚なうま味を加えることによって、塩分は補えます。つまり塩気は少なくても、おいしくいただけるのです。

 ここでは、シメジを最初に干しエビと炒めて水分を飛ばし、うま味を濃縮します。干しエビもシメジ同様、良いダシが出ますから、調味料もわずかな量しか使いません。お米と炊き込む前のこのひと手間によって、塩気は薄くても、味がしっかり入った炊き込みご飯ができあがります。

 もう一品はネギと一緒にホイル焼きにしました。アルミホイルで包み焼きにすることによって、香りを逃しません。

 キノコ類を調理する際のポイントは水で洗わないこと。風味が落ちてしまうからです。

 汚れはキッチンペーパーでふき取ります。

■炊き込みご飯

《材料》
◎シメジ  2パック(石づきを除いてほぐす。大きいものは半分に割く)
◎干しエビ  大さじ2(5ミリ大に切る)
◎米  2カップ(といで10分浸水、15分水切り)
◎ごま油  大さじ1
◎ショウガみじん切り  大さじ1
◎ダシ汁  1と2分の1カップ
◎塩  小さじ1
◎酒  4分の1カップ
◎薄口醤油  大さじ1と2分の1

《作り方》
(1)フライパンにごま油とショウガを合わせて中火で炒め、香味がたったら、干しエビ、シメジを加え強火でさっと炒める(写真)。
(2)土鍋に米、炒めたシメジと干しエビ、ダシ汁、塩、酒、薄口醤油を加えて炊く。

■ホイル焼き

 アルミホイルを20センチ大に切って、バターを塗る。その上に、シメジ1パック(石づきを除いてほぐしたもの)、ネギ2分の1本(縦半分に切って芯を除いて斜め薄切り)、冷凍無頭エビ4尾(殻をむき背開き)、白ワイン大さじ1、オリーブオイル大さじ1、塩小さじ3分の1、白ゴマ少々をのせ、ホイルを閉じる。魚焼きグリルまたは220度に予熱をしたオーブンで7~10分焼く。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

香味がたったら、干しエビ、シメジを加え強火でさっと(作り方①)
香味がたったら、干しエビ、シメジを加え強火でさっと(作り方①)(C)日刊ゲンダイ
キノコの旬が秋の生物学的理由

 キノコは、植物ではない。もちろん動物でもない。菌類という第三の生物。独自の進化を遂げた。動けないけど、光合成もできない。他者に寄生するしかない。

 しかし、ただ乗りしているわけではなく、自然界の「分解者」として重要な役割を果たす。とくに他の生物が分解できない木質(リグニン)が分解できる。なので樹木が自然に戻るのに役立つ。キノコが寄生する樹木はキノコによって好みがある。うま味が濃いホンシメジはコナラやアカマツに(これが「香りマツタケ味シメジ」のシメジ)、より普及品のブナシメジはブナなどの広葉樹につく。

 キノコの旬は秋、の生物学的理由がある。ふだんはキノコは菌糸を伸ばして落ち葉の下や木の裏に隠れている。気温が下がると(昼間と夜の気温差が大きくなると)、これを察知し、傘(子実体)を作る。

 つまりヒト以外の生物にとって情報とはインターネットのことではなく、情報の「変化」の方が情報なのだ。胞子は、動物の精子や卵子と同じくn体。胞子を拡散して、ニッチ(隙間)を広げる。胞子は耐熱性、耐乾燥性にすぐれて生き延びる。自然界でパートナー胞子と出あってn+n体となり、キノコ(子実体)となる。遺伝子の混合。この点は動物や植物と同じ有性生殖なのである。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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