病み患いのモトを断つ

インフルが早くも流行の兆し 5つの薬の解熱時間の違いは

パンデミック(右、2009年当時)以降、薬が効きにくいタイプのウィルスが…
パンデミック(右、2009年当時)以降、薬が効きにくいタイプのウィルスが…(C)日刊ゲンダイ

 インフルエンザが早くも流行の兆しをみせている。ありふれた病気ながら、万が一、感染すると高熱にうなされ、治るまで1週間の出勤停止を余儀なくされるから厄介だろう。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班リサーチディレクターの池松秀之医師に、今シーズンの傾向について聞いた。

 インフルエンザには、A型とB型があり、144の亜型があるA型のうちで人に感染するのは主にH1N1とH3N2だという。

「例年、A型はH1N1とH3N2を交互に、B型は多いシーズンと少ないシーズンを繰り返す傾向があります。昨シーズンはH1N1が流行し、B型が少なかったので、今年はH3N2が流行して、B型が増えるかもしれませんが、今後の動向を見ないと、何ともいえません」

 2009-10年のシーズンに日本中をパニックに陥れたのが、H1N1の変異によるパンデミックだったが、元のH1N1ソ連型と区別されH1N1pdmの亜型で定着している。

「H1N1の患者数の年齢分布を見ると、通常は小児に多いのですが、08-09シーズンのH1N1pdmは、10代の中高生に多く、60歳以上の高齢者はほとんど感染しませんでした。ところが、その後の動向を見ると、中高生の感染が抑えられ、一般的なH1N1と同様に小児が増え、高齢者も感染しています」

 B型は小児が感染すると重くなるが、成人感染は症状が軽い。

 昨シーズンに“隠れインフル”が流行語になったのは、風邪かと思って受診したらB型が見つかったため。その背景に簡単に診断できる簡易キットの普及があり、最近はB型が増加傾向だという。

「高熱を起こすのはA型で、一般にH1N1とH3N2の方が高い傾向があります」

「インフルエンザ診療マニュアル2019-2020年シーズン版」によれば、どちらも最高体温は年齢が上がるにつれて低くなり、インフルのイメージ通りの39度以上になるのはH1N1で10代まで、H3N2で30代までだ。どちらも40代以上は38度台にとどまる。

 気になるのは、薬の治療効果だろう。種類は、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザの5種類。A型におけるこれらの薬の平均解熱時間は、タミフル27.7時間、リレンザ32.8時間、イナビル27.4時間、ラピアクタ30.5時間、ゾフルーザ24.5時間とそれほど大差がないが……。

「パンデミック以降、タミフルとラピアクタについては、一定数、薬が効きにくいタイプのウイルスが検出されています。また、ゾフルーザはほかの4剤に比べて、体内からウイルスを減らす効果が高い。服用の仕方も、内服や吸入、点滴静注などさまざまなので、患者さんの状況やウイルスなどに応じて使い分けることが大切です」

 ゾフルーザをめぐっては、変異を持ったウイルスだと、ウイルス量が再上昇するという報告もあるが、変異の有無で症状の変化は認められず、はっきりしたことは分かっていない。

「37.5度を超えると、インフルエンザの発症が疑われますが、どの薬にせよ、発症から使用までの時間が短い方が、発熱時間が短くて済みます」

「ヤバいかも」と思ったときは、発症12時間くらいのうちに受診するといいだろう。

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