医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

青あざだけじゃない 血小板減少症は肝臓の線維化のサイン

顔や手足の露出部分に青あざがないかチェック
顔や手足の露出部分に青あざがないかチェック

 企業健診では、採血の結果が出るまでひと月以上も時間がたっていることがあります。

 このひと月が大丈夫だから、今後も問題はないだろうということですが、異常が検出されたら、すぐに結果が主治医に伝えられるシステムは必要でしょう。そう思う検査結果のひとつが、血小板です。

 基準値は、12万~40万個/00Lμで、特に10万個以下では血小板減少症と診断されます。そんなときは、顔や手足の露出している部分に青あざがないかチェック。念のため上着の裾やズボン、スカートの裾を上げてもらい、視診で確認し、さらには「手や足がなにかにぶつかって青あざにならないか」と問診します。

 家族に高齢の人がいると、見覚えがあるでしょう。「イスの角にすねをぶつけて、青あざができちゃって」と痛そうなところをみると、青あざがクッキリ。なぜそうなるかというと、血小板には血を固める働きがあるのですが、少ないがゆえに内出血が長期間にわたって患部にとどまり、あざが残るのです。

 ですから、青あざ経験を尋ねる問診の答え方によって、本当に様子を見ていいのか、精密検査が必要なのか、判断が分かれるのです。

「特にそんなことはない」なら、過去の血小板数値に異常がないか確認した上で、大丈夫なら様子を見ます。「過去に精密検査を受けましたが、大丈夫でした」も様子見ですが、「精密検査を受けたことがない」という人は、一度、検査を受けるべきでしょう。

 血小板減少症は、いろいろな原因が考えられますが、侮ってはいけないケースが少なくないのです。たとえば、肝炎や肝硬変などで、肝臓が硬くなる線維化が進むと、血小板の数値が低下することが知られています。肝機能の数値としては、γ―GTP、ALT、ASTなどが有名ですが、肝臓の線維化との相関関係は血小板が一番です。

 18万個で軽度の線維化が認められ、さらに進んで10万以下だと肝硬変が疑われますから、前述の基準値内でも低下傾向なら要注意。肝炎のうちに治療を受けたり、生活改善に取り組んだりすれば肝機能は改善しますが、肝硬変になると難しいですから。

 もうひとつが、薬剤の影響です。リウマチの薬でよく使われるメトトレキサートや抗てんかん薬のカルバマゼピン、甲状腺治療薬のチアマゾールなどは副作用に血小板減少があります。それらによる薬剤性なら、薬の変更で血小板の数値は改善します。

 一方、骨髄の病気やがんなどになると、逆に血小板の数値が上昇することも。そうなると、血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上昇。こちらも見逃してはいけない病気ですから要注意でしょう。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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