情報を吟味する際にまず重要なことは、それが理論なのか、事実なのかという視点です。
例えば体内の酸素利用過程で生じる活性酸素は、がんや老化と関連しています。
その活性酸素による酸化過程をブロックすれば、がんや老化を防ぐことができるかもしれません。
ビタミンAやビタミンEは抗酸化作用を持つため、活性酸素による酸化を抑え、がんや老化の予防に役立つ可能性があります。こうした話を聞くと、多くの人はビタミンAやビタミンEをたくさん取るといいのだと思うかもしれません。しかし、これは単なる論理です。つまり、「ビタミンAやEを取ると老化やがんが予防できる」というのは論理に基づく仮説にすぎないのです。
しかし、現実にはこうした仮説があたかも事実のように世に流れます。公益財団法人長寿科学振興財団が提供する「健康長寿ネット」という、いかにも信用できそうなウェブサイトがありますが、そこ(編集部注=「抗酸化による老化防止の効果」更新日:2019年2月1日18時01分)には以下のような記述があります。
「抗酸化物質は、がんなどの病気や老化を予防し、遺伝子を守るためには、ヒドロキシラジカルを無毒化することです。抗酸化物質の効果としては以下があります」とあり、「がん抑制」「動脈硬化予防」「アンチエイジング対策」の3つが挙げられています。
しかし、これは今では誤りであることが示されています。ビタミンAの前駆体であるβカロテンは、喫煙者の肺がんをむしろ増加させることが示されています。また、ビタミンEも心筋梗塞やがんを予防する効果はないことが事実として示されています。
まず情報を吟味する際には、それが単なる理屈なのか、事実として示されているのかを明確にすることが必要です。
医療情報の正しい読み方