専門医が教える パンツの中の秘密

大人のおたふく「子種が全滅して子どもができなくなる」はウソ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子種がなくなる可能性が出てくるのは、合併症のひとつ「精巣炎」になった場合です。男性が思春期以降におたふく風邪にかかると起こることがあり、合併率は20~30%といわれています。

 精巣炎は、おたふく風邪を発症してから4~7日後に「睾丸が腫れて痛い!」という症状が表れます。炎症が強く睾丸がひどく腫れると、その後、数カ月から1年くらいかけて睾丸が萎縮する可能性があり、両方の睾丸が萎縮してしまうと「無精子症」になるのです。

 ただし、精巣炎は片側の睾丸に起こることが多く、両方が萎縮してまったく精子がいなくなることはまれだと思います。精巣炎が反対側の睾丸に影響を及ぼし、精子の数が減る「乏精子症」や精子の運動率が悪くなる「精子無力症」になることもあるでしょう。

 最悪、無精子症になって精液中に精子が見つからなくても、すぐにあきらめてはいけません。男性不妊専門施設では、精巣内から精子を回収する手術を実施しています。回収率はかなり高いようですから、顕微授精することで十分に妊娠は期待できます。

 また、手術という事態を避けたければ、他にも対策があります。1つ目は、おたふく風邪にかかったら精子を凍結すること。精巣炎になった直後でも間に合います。2つ目は、抗体検査を受けて免疫がなければワクチン接種をすること。1カ月以上あけて2回接種すれば感染しません。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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