また、とくに腹腔鏡手術については、多くのガイドラインで「経験数が重要」ということが述べられています。
肝がんのガイドライン(17年版)には、「通常の開腹による肝癌手術の経験が十分にあるなどの条件を満たす病院のみが、腹腔鏡手術を行うべき」と書かれています。泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン(14年版)にも、「術者の経験が大事」ということが繰り返し書かれています。
つまり病院の規模よりも、経験数の多い病院で、経験値の高い外科医に執刀してもらうほうが大切というわけです。
では胃がんはどうでしょうか。
しかし開腹手術に関する記述はありません。胃がんの開腹手術はすでに十分確立されているため、病院や外科医による違いは大きくないのかもしれません。
ただし腹腔鏡手術に関しては要注意です。ガイドライン(18年版)では、ステージⅠの腹腔鏡下胃全摘について「この術式に習熟した医師本人、またはその指導下に行うことを推奨」しています。同じくステージⅠの部分切除では「経験数が少ないと術後合併症が多いという報告もあり、各施設において習熟度に応じた適応基準を設けるべきだ」と書かれています。胃がんの腹腔鏡手術も、やはり経験が豊富な病院・医師を頼ったほうが成功率が高く、予後がよさそうです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。