酒がうまい季節だから知っておきたい…むくみを防ぐ食事術

塩分の過剰摂取、タンパク質不足は要注意
塩分の過剰摂取、タンパク質不足は要注意(C)日刊ゲンダイ

 肌寒くなり酒が恋しい季節がやってきた。仲間と酌み交わす酒は格別でついつい深酒になりがちだが、困るのは翌日だ。顔や体がむくみ、仕事に支障をきたすことも。

 むくみは長く続くと持病の薬、心臓や腎臓の病気などが疑われるが、多くは一時的だ。だから気にしないという人もいるだろうが、できたら防ぎたい。それには食事に気をつけるのも手だという。早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所招聘研究員で愛国学園短期大学非常勤講師の古谷彰子氏に聞いた。

「むくみは体の中に余分な水分がたまっている状態です。水分は、血液やリンパ液として体内を循環し、全身に酸素や栄養素を運んだり、不要な老廃物を回収したりしていますが、この循環がスムーズに行われなくなると、余分な水分が皮下組織にたまってしまいます。細胞と細胞の間にある間質液が異常に増えて皮下組織に過剰にたまり、体表面が腫れたように見えるので、浮腫とも呼ばれています」

 成人男性の体は約60%が水分でできている。その3分の2(体重の約40%)が細胞の中にある細胞内液で、残り(同約20%)が細胞の外にある細胞外液だ。細胞外液のうち4分の1(同約5%)が血管の中を流れる血しょうで、残りが細胞と細胞の間にある間質液(同約15%)だ。水分が体重の10%以上増加すると、むくみとして認識できるようになるといわれる。

 つまり、体重80キロの人がむくみを自覚したときは8キロの水分が体内にたまっている可能性があるのだ。これが繰り返されれば体の調子が悪くなるのは当然だ。

 大量のお酒を飲んだ翌日に顔などがむくむのは、単に日本酒や焼酎、ビールなどの水分をたくさん取るからではない。血液中のアルコール濃度が高くなったり、濃い味付けのおつまみやシメのラーメンを食べて血中の塩分濃度が上がった分、浸透圧の働きにより血液に流れ込む水分が多くなって血管がパンパンになる一方、静脈やリンパ管でその処理ができなくなるからだ。

「浸透圧とは、細胞膜のような半透膜で隔てられた濃度の異なる2つの液体の間で生じる、濃度の低い方から高い方へ移動する圧力のことです。タンパク質の一種である『アルブミン』が血液中に大量に存在することで浸透圧が働いて、血管内外の水分量が調整されています。そのアルブミンが不足すると、水分が血管の外に抜けて浮腫が生じる原因になるのです」

 テレビや雑誌などで難民の乳幼児のお腹が膨張している姿が紹介されるが、これは極度のタンパク質不足と不十分なエネルギー摂取によるクワシオルコルという症状だ。タンパク質不足のため、低アルブミン血症を引き起こす。

 アルブミンは脂肪酸やミネラル、ホルモンなどと結合し、体内の必要な場所にこれらを運搬する働きがある。肝臓でつくられ、役割を終えると筋肉や皮膚で分解される。アルブミンが不足する原因はさまざまあるが、偏った食事や急激なダイエット、高齢で食が細くなっても起こるという。

「40歳を過ぎると自然と食事量が減ってきます。若い頃と同じように食事を取っているつもりでも偏った食事になっている可能性もあります。中高年は注意が必要です」

■塩分の過剰摂取、タンパク質不足は要注意

 頑張ってやせようとしているけれども体重が落ちないという人の中には、偏った食生活からタンパク質が不足し、水をためやすい体質になっているケースもあるという。

 浮腫を防ぐためには小腸や肝臓、腎臓を保護し、ビタミン、ミネラルをはじめ、良質なタンパク質をしっかり取ることが重要だ。そのうえで塩分を減らす必要がある。

「塩分は水分を保持する働きがあるので、できるだけ摂取量を抑える必要があります。それには単に薄味を心掛けるだけでなく、塩分を取り過ぎない食べ方や調理の仕方に気をつける必要があります。例えば、調味料に酢やレモン、ユズ、スダチといった柑橘類の酸味や、唐辛子、コショウ、山椒、ワサビ、カレー粉などの香辛料や、青シソ、ネギ、三つ葉、セロリ、ショウガ、ニンニクなどの香味野菜を使うのも手です。冷たいものは味を感じにくいため、ついつい塩をふってしまいがちです。料理は温かいうちに食べるのがいいでしょう」

 味噌汁、おすまし、洋風スープなどはおわん1杯で1・5~2グラム程度の塩分が含まれる。ダシを使い、具だくさんにするのがお勧めだという。

「ラーメンは1人前で7~10グラムの塩分が含まれているといわれます。スープを飲み干さないようにしましょう」

 なお、減塩とは塩分を通常の食品の半分以下に減らした製品のこと。塩分控えめ、薄塩、浅塩、甘塩、低塩などの表示は通常の商品に比べて塩分が80%以下の食品を指す。

「薄口醤油は料理の素材の色や味を生かすため色や香りが淡いですが、塩分は濃い口より約2%高い。通常の醤油の半分以下の塩分なのは減塩醤油です」

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