病み患いのモトを断つ

エアコンが乾燥を助長 インフルウイルスを殺す加湿の目安

東京の冬は砂漠よりカラッカラ
東京の冬は砂漠よりカラッカラ(C)日刊ゲンダイ

 朝晩は寒くなり空気が乾燥してきた。インフルエンザや風邪にかかりやすいシーズンだ。これらの病気にかかりやすい人もいれば、ほとんど無縁な人もいる。その違いは、湿度対策にあるかもしれない。東京医大名誉教授の加藤治文氏に聞いた。

 夏と並んで冬に手放せないのが、エアコンだろう。エアコンの種類によっては、これが乾燥を助長し、インフルエンザや風邪にかかりやすくなるという。

「空気中に含まれる水分量(飽和水蒸気量)は温度によって決まっていて、温度が高いほど多くなります。エアコンは空気を暖めて部屋の温度を上昇させますが、水蒸気を発生させることはありません。室内の水分量が同じで室温が上昇すると、飽和水蒸気量が増えるため、相対的に湿度が下がります。インフルエンザウイルスは、寒冷と乾燥を好むため、加湿せずにエアコンを使っていると、インフルエンザにかかりやすくなります」

 インフルエンザウイルスの生存率は、気温と湿度で大きく変わる。気温10度、湿度20%だと、生存率は6割を超える。湿度20%のまま、気温が22度になると、やや上がって7割近いが、気温32度になると2割を下回る。ところが、気温10度で、湿度50%の生存率は4割ほどで、湿度50%のまま22度になると、1桁台に低下し、32度では死滅する。

 これは、1961年にG・J・ハーパーが発表した論文だ。50%の湿度が、インフル予防の根拠になっているが……。

「湿度50%、気温30度に含まれる水分量は15グラムですが、気温10度だと4・6グラムに減ります。水分そのものが少ないので、乾燥を感じるし、それで喉が渇くと余計にウイルスが上気道に感染しやすいのです」

 実は、空気中の水分量が11グラムを下回ると、インフルエンザが流行するといわれる。家電量販店には、温度と室内の水分量をセットで表示する温湿度計が1000円程度で売られている。それを参考にして室内の水分量が11グラムを上回るように加湿するのがベターだろう。室温25度で、湿度50%だと、水分量は11・5グラムになる。過剰な加湿はカビを繁殖させる。加湿の目安は、室温20~25度、湿度は60%までだ。

 気象庁によれば、今年1、2月の東京の平均湿度は50%台だが、最小湿度は20%に下がる。都市部の湿度は低下傾向で、2003年2月28日には最小湿度6%を記録。砂漠の平均湿度が20~25%といわれるから、東京の冬の湿度はタイミングによっては砂漠以下。加湿の大切さが、見て取れるだろう。

 エアコンの種類によっては、加湿機能があるタイプもある。なければ加湿器を使うか、燃料が燃えるときに水蒸気が出る石油ストーブかガスファンヒーターにするといいだろう。

「加湿器の水は毎日入れ替え、容器はこまめに洗うこと。細菌が繁殖したような水だと、元も子もありません」

 マスクは細菌やウイルスの侵入をある程度ブロックする働きのほか、口の周りの湿度を保つ効果もある。

 加藤名誉教授は、インフルエンザや風邪の予防として、「冬はマスクをつけて寝る」という。インフルエンザのワクチン接種はいうまでもないが、いま一度、加湿には注意したい。

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