医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

血清総タンパクは肝機能の目安 過激な減量で数値が急降下

行き過ぎるダイエットは注意
行き過ぎるダイエットは注意

 尿タンパクの有無は、腎機能をチェックする上で重要な指標です。では血液中のタンパク質を示す血清総タンパクは、何を示すでしょうか。肝機能を知る手掛かりになります。

 血液の液体成分である血漿から、血液凝固に関わるタンパク質のフィブリノーゲンを除いたものが血清。その中にはアルブミンとグロブリンという2種類のタンパク質が含まれていて、主にそれらを合わせたものが血清総タンパクです。大体、アルブミンが6割、グロブリンが2割で、残りの2割は微量タンパクが占めます。

 検査結果で総タンパクが上昇しているときはグロブリンが増加し、逆に、低下しているときはアルブミンが減少しているケースが一般的。数値を見てドキッとするのはアルブミンが極端に下がっていることがあるのです。急性肝炎や肝硬変といった肝臓の一大事が想定されるほどに低いこともまれにあります。

「様子を見ましょう」というのは、もちろん肝機能の検査です。それで肝機能が正常なら問題はありませんが、そうだとすれば、なぜアルブミン値が極端に下がったのか。それは、過度なダイエットの影響です。

 アルブミンは、栄養状態を反映するタンパク質で、ダイエットでタンパク質の摂取量が著しく減ると、数値が低下しやすい。そういう数値は、女性に多いものの、最近は男性も珍しくなくなっています。糖質オフダイエットが定着し、糖質だけでなく、肉や魚、野菜など全体的な摂取量を減らす人がいて、ダイエットが行き過ぎることがあるのです。

 急性腎炎やネフローゼ症候群など腎機能の異常でも、総タンパクが下がることがあります。その場合は、タンパク尿の有無で判定し、「-」なら大丈夫です。

 再検査で採血するときは、採血時の体位も重要で、寝た姿勢で採決すると座っているときより数値が5%ほど低くなります。立った状態だと、逆に8%高くなる。そういうことはあまりないでしょうが、頭に入れておいてください。

 グロブリンの増加によって総タンパクが上昇しているときは、感染症が疑われます。検査の前の日に胃腸炎などで下痢や嘔吐をして脱水状態があると、相対的にタンパク質の比率が上昇するでしょう。次に念頭におくことは肝硬変と慢性肝炎ですが、肝機能検査が正常ならば除外できます。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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