遺伝子治療薬はここまで来ている

「遺伝子」=「指示書」に誤記や消失があると病気になる

(提供写真)

 遺伝子治療薬は研究の歴史は深いものの、医療においては使われ始めたばかりです。対象となる疾患も少なく、まったく馴染みがない、もしかしたら聞いたこともないという方のほうが一般的でしょう。そこで、遺伝子治療薬について従来薬との違いや薬効、対象となる疾患などを期待感を込めて解説していきます。

 まず、最先端の遺伝子治療薬について解説する前に、「遺伝子」とは何かについて簡単に触れておきます。

 遺伝子とは何か? 抽象的にいえば「生命活動を営むための必要な指示書」です。その指示書は染色体またはDNA(ゲノム情報と呼ばれることもあります)という膨大なページの説明書から、必要な時に必要な箇所だけを抜き出したものになります。つまり、「人の生命活動の説明書」=「DNA」で、すべての人がおのおの違った説明書を持っています。その説明書の中から、「今この活動をするなら、こちらのここに必要なことが書いてありますよ」と一文を切り出したものが遺伝子ということです。

 人の体はさまざまな種類の細胞でできているのですが、そのほぼすべてに核があり、その核に完全に同じ説明書(DNA)が入っています。そして、説明書から一文を切り出した指示書である遺伝子は2万種類あり、それら指示書の組み合わせによって、生き物は複雑な生命活動を行うことができるのです。

 言い換えれば、この説明書や指示書に誤記があったり、一部消されてしまった場合には、正しい生命活動ができず、病気になってしまいます。ですから、遺伝子は生命や病気の本質に関係しているとても重要なものなのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

関連記事