インターバル速歩で体力が10歳若返り脳卒中リスク40%減

「速く歩く」と「普通に歩く」を交互に繰り返すだけ
「速く歩く」と「普通に歩く」を交互に繰り返すだけ(C)日刊ゲンダイ

 健康効果が高い「インターバル速歩」をご存じか? 1回30~40分ででき、忙しくて時間がない人にも向いている。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学の増木静江教授に話を聞いた。

 インターバル速歩は、「速く歩く」と「普通に歩く」を交互に繰り返すエビデンスに基づいた運動療法だ。増木教授の“先代”である能勢博氏(現在は信州大学医学部特任教授)が考案した。

 具体的なやり方はこうだ。ゆっくり3分間歩いたら、今度は速足で3分間歩く。これを繰り返す。スピードの目安は、本人が“ややきつい”と感じる最大体力(最高酸素摂取量=VO2peak)の70%。「速く歩く」を1日15分以上、週4日以上実施するのが目安だ。

「インターバル速歩を5カ月間やった人を調べると、膝伸展筋力や膝屈曲筋力、持久力の指標である最高酸素摂取量が10~20%上昇しました。これは体力的に10歳若返ったことに相当します。その結果、最高血圧と最低血圧も下がり、脳卒中の発症リスクが40%低下しました。一方、1日1万歩ではほとんど変化がありませんでした。インターバル速歩は1日1万歩より体力向上、血圧低下に効果があるのです」

 別の研究によると、最高酸素摂取量から被験者を「低体力」「中体力」「高体力」に分け、血圧、空腹時血糖値、BMI、中性脂肪、HDLコレステロールから生活習慣病指標をつけた。点数が高いほど生活習慣病のリスクが高いことを意味する。すると、体力が低い人ほど生活習慣病指標の点数が高かったが、5カ月間のインターバル速歩後は体力の低い人ほど体力が上昇。生活習慣病指標の点数も低下したのだ。

 5カ月間のインターバル速歩で睡眠障害や認知機能も改善するという結果も出ている。

「体力の向上効果は、1週間当たりの速歩時間に比例します。つまり、本人が“ややきつい”と感じる強度の速歩を1週間当たりどれくらいの時間やるかが重要です。ただし、最近の私たちの研究で、速歩時間が週10分以下だと加齢による影響に負けてしまい体力の向上効果は認められず、週50分以上実施してもその効果が頭打ち気味になることも分かりました」

■30分以内に乳製品を取るとより効果的

 さらなる研究では、インターバル速歩後30分以内に乳製品を取ると、より効果が高くなることも判明した。

 インターバル速歩を6カ月以上継続している中高年が、それに追加して5カ月間、インターバル速歩後に乳タンパク質と糖質サプリメントを取るようにしたところ、大腿部にある屈曲筋群の断面積と筋力が大きくなったのだ。

「インターバル速歩後の乳製品摂取は、炎症促進遺伝子やがん遺伝子を抑制することも明らかになりました。筋肉を太くして筋萎縮を抑制し、それが結果的に炎症促進遺伝子などを抑制することにつながっているのだと考えています」

 乳製品はチーズやヨーグルトなど。チーズ(18グラム)またはヨーグルト(80グラム)を1単位として、1~3単位が目安。また、乳製品や糖質の摂取が高血圧や糖尿病などを悪化させるのではないかという懸念があったが、インターバル速歩で生活習慣病のリスクが下がるので、問題はないという。

 インターバル速歩は正しいやり方でないと効果を得にくいため、現在は信州大学のスタッフらで構成するNPO法人「熟年体育大学リサーチセンター」養成のインストラクターが一般の人に指導。インターバル速歩をサポートする専用アプリも発売されているので、これを使えば長野から遠く離れた地域に住んでいる人でも実施可能だ。

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