病気を近づけない体のメンテナンス

のど<下>風邪で痛みが出るのは正常 安易な咳止めは考え物

緑茶と蜂蜜コーヒーが効く
緑茶と蜂蜜コーヒーが効く

 風邪やインフルエンザが気になる季節がやってきた。「私はのどが弱いから、すぐ痛くなる。風邪をひきやすいのだ」と思っている人も多いだろう。しかし、それはまったくの勘違い。のどは口から入った病原体を最初にシャットアウトするための“第一関門”だからだ。「池袋大谷クリニック」(東京都豊島区)の大谷義夫院長が言う。

「のどが腫れるのも痛むのも、免疫力が正常に働いている証拠。のどが弱いどころかむしろ強いのです。一般的に病原体がのど(上気道)で止まれば、風邪をひいたとしても症状がそれほどひどくなりません。比べて高齢者は圧倒的にのどが痛くならないし、風邪をひくことが少なく、病原体がいきなり下気道まで侵入して肺炎になってしまうことがよくあります。それは加齢とともにのどが老化して、免疫力が弱くなっているからです」

 のどが担っている免疫力の働きとはこうだ。鼻に異物が入らないように鼻毛が生えているのと同じで、のどから気管の粘膜には「線毛」という1000分の5ミリほどの細かい毛がびっしりと生えている。線毛の先端は粘液で覆われていて、常に口の方へとなびくように動いている。

 線毛が病原体などの異物をキャッチすると、ベルトコンベヤーに載せられたように口の方へ運ばれる。そしてタンと一緒に体外に排出されるか、唾液と一緒に食道から胃へとのみ込まれるのだ。胃に入った病原体は胃酸によって死んでしまう。とはいっても鼻毛や鼻粘膜も病原体をキャッチするフィルターとなり、免疫機能のひとつを担っている。口呼吸しがちな人は意識して“鼻呼吸”を心がけることで、のどへの負担が減らせるという。

「のどが痛くなるのは免疫力が正常に働いている証拠でいいのですが、同時に線毛がダメージを受け、病原体を外へ運び出す力が弱まります。ですからのどの痛い風邪をひいた後は、気管支炎や肺炎を起こしやすいので注意が必要です」

 線毛だけで排除し切れない病原体もいる。そんなときには気道の粘膜から脳にその情報が送られ「異物を吐き出せ」という指令が出される。

 これが「せき反射」で、体の防御反応として起こる。呼吸器の専門医が風邪のときにせき止めを出さないのは下痢と一緒で、異物を排出しているせきは止めない方がいいからだという。

 しかし、加齢でのどののみ込む力が衰えるとせき反射も弱くなる。高齢者が肺炎になりやすいのは、せき反射が弱く、病原体が下気道に侵入しやすいからだ。

「ただし、せきには異物を排除するための『良いせき』と、アレルギー反応など炎症が原因で起きている『悪いせき』があります。せきぜんそくなど悪いせきは、早めに薬で止めないと治りにくくなります。2週間以上せきが続く場合は、呼吸器やアレルギーを専門とする医師を受診した方がいいでしょう」

■コーヒーは「のどにいい飲み物」の代表格

 では、風邪やインフルエンザの対策に、マスクは本当に有効なのか。確かにウイルス自体はマスクの繊維を通り抜けてしまう大きさだが、基本的にはウイルスは単体では存在しない。せきをしたときの唾液と一緒になってしぶきで飛び散るので、マスクを通り抜けない。それに他人にうつすリスクも下げられる。

 もうひとつのメリットはのどを加湿してくれること。

 線毛は乾燥すると働きが低下する。特に口呼吸しやすい人はマスクを着けた方がいいという。

「マスクは使い捨てが基本です。家を出て一度着けたマスクをポケットにしまって、再度着ける人がいますが、それではウイルスが手に付くので意味がありません。マスクは使い回しすることなく、外したらすぐ捨てる。また、マスクは外し方が重要です。マスクの表面や口に当てた部分は触らず、ゴムひもを持って外します。マスクを着けているときも表面を触ってはいけません」

 インフルエンザウイルスは感染後、短時間で粘膜に侵入するので「水うがい」の予防効果は乏しい。それよりもカテキンの殺菌作用のある「緑茶」を一口、二口ずつ頻繁に飲んだ方が予防効果は期待できるという。

 それと、せきが止まらないときに大谷院長が勧めるのは「蜂蜜コーヒー」。コーヒーに蜂蜜を垂らして飲む。

「コーヒーに含まれるカフェインには気管支拡張作用や抗炎症作用があり、のどにいい飲み物の代表格です。蜂蜜にも抗炎症作用や抗酸化作用があり、せきを改善する効果があります」

 早速、冬のインフルエンザ対策を始めよう。

関連記事