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口が開かない、顎が痛い、音がする…受診すべきタイミング

異常でなくても多少の音は…
異常でなくても多少の音は…

【Q】最近、口を開けるとカリッと音がします。病気でしょうか?

【A】口を開けると耳の脇辺り(=顎関節部)からたまに音がしたりすることは、あまり気になさらなくてよいでしょう。ただ、明らかに普段とは異なる痛みや異音がする症状を「顎関節症」といいます。

 ほとんどの人の顎関節は異常でなくとも多少の音を立てます。その意味では顎関節症予備群といえますが、予防法はあります。硬いものを長時間噛まない、食べ過ぎない。頬杖ばかりつかない。物を食べるときに片側だけで噛むのを避ける。ストレスを抱え過ぎない。そして、寝ているときに無意識の食いしばりや歯ぎしりがある場合は歯科医師に相談をする、ということです。

 顎関節症の特徴的な3大症状は「顎が痛い」「口が開かない」「顎から音がする」で、歯科医院を受診すべきタイミングは、これらの明らかな異常が起きたときです。

 顎関節は耳の穴(外耳道)のすぐ前にあり、下顎の骨(下顎骨)の一番後ろの上方に突き出た部分(下顎頭)が、頭の骨(頭蓋骨)の下面のくぼんだところ(下顎窩=かがくか)に、はまり込んでできていて、間にクッションの役割をしたり動きをスムーズにしたりする関節円板という組織があります。

 口を開閉するときは下顎頭と関節円板は一緒に動くのですが、なんらかの原因で一緒に動かなくなる場合があります。

 たとえば、下顎頭から関節円板が外れてしまうと、カリッとかカクッという音がするのです。これをクリック音と呼びますが、痛みもなく生活に支障が出ないときは手を加えないで経過観察します。

 ある患者さんは、この症状を改善できないかと思いつきで「関節だから動かせば動かしただけスムーズになるだろう」と考え、口を大きく開けたり閉じたり、硬いものを噛んだりしていたそうです。しかし、症状は悪化し顎の痛みで口が開けられなくなって僕の診療所に駆け込んできました。

 顎関節症の症状には段階があり、治療法が異なります。自分の考えや思いつきで治そうとしないでください。

 (構成=小澤美佳)

北沢伊

北沢伊

1977年7月8日、長野県生まれ。斉藤歯科医院院長。2003年に日本大学松戸歯学部を卒業。同年から同院に勤務し、13年から院長に就任した。若手歯科医師に向けたセミナーの講師を務め後進の育成にも取り組んでいる。日本口腔インプラント学会専門医。千葉県歯科医師会所属。

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