ガイドライン変遷と「がん治療」

胃がん<7>抗がん剤治療 体力が続けば「3段階」まで可能

 ステージⅣと再発性の胃がんに対する化学療法の1次治療は、HER2陽性か陰性かで分かれます。陽性ならカペシタビン(またはS―1)+シスプラチン+トラスツズマブの併用療法です。前の2つは従来からの抗がん剤ですが、トラスツズマブはHER2タンパク質(がん細胞の増殖を促進する)をターゲットとした分子標的薬です。2001年に乳がんの治療薬として承認され、ハーセプチンという商品名で知られています。胃がんで使えるようになったのは18年9月からで、現時点では、最新にして最良の組み合わせです。

 一方、HER2陰性と診断された患者にはトラスツズマブを除いた組み合わせが処方されます。またFOLFOX(5―FU+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチン)療法もよく使われています。オキサリプラチン(14年承認)はシスプラチンに近い薬ですが、副作用が弱いといわれています。

 投薬のパターンは治療法によって異なります。数週間やってみて、効果が出れば、そのまま効果がなくなるまで、あるいは副作用が耐えられなくなるまで継続します。

 1次治療が終了すると、2次治療に移ります。ただし1次治療ですでに体力を消耗している患者には、2次治療は行われません。まだ耐えられそうな患者だけが対象になります。

 2次治療は、HER2の陽性や陰性に関係なく、パクリタキセル+ラムシルマブ(商品名サイラムザ)という組み合わせで行われます。ラムシルマブは、血管新生阻害剤と呼ばれる分子標的薬で、15年から使用されています。がんは成長するために大量の酸素と栄養を必要とするため、自分の周りに新しい血管をつくらせようとしますが、それを妨害して兵糧攻めにするわけです。

 しかし、それも効かなくなると、3次治療としてニボルマブ(商品名オプジーボ)が使用されます。ご存じの免疫チェックポイント阻害剤で、17年9月から使用が認められています。延命効果は、1カ月ないし数カ月といわれていますが、なかには年単位で寿命が延びる患者もいるようです。

 胃がんの化学療法は年々変化し続けているため、数年後には今とは大きく変わっているかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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