足がむくむ 指で強く5秒押してへこみが戻らなければ病院へ

東京血管外科クリニック・榊原直樹医師
東京血管外科クリニック・榊原直樹医師(C)日刊ゲンダイ

 ふくらはぎが痛くて整形外科で超音波検査を受けたら、「(下肢)静脈瘤ができていて血液がほとんど流れていません」と言われた――。記者が実際に経験した話だ。下肢静脈瘤とはどういう病気なのか? 東京血管外科クリニック・榊原直樹医師に聞いた。

 記者のふくらはぎの痛みは肉離れが原因だったが、それとは別に下肢静脈瘤の疑いを指摘されたというのが冒頭の話。

 血液は心臓から動脈を通って足へ行き、足から静脈を通って心臓に戻る。静脈には血液が逆流しないように弁がついている。下肢静脈瘤は、足の静脈の弁がうまく働かなくなる病気だ。

「静脈内に血液がたまり静脈の壁にかかる圧力が高くなるため、最初のうちは血管が膨らんだり、足がむくむなどの症状が見られます。進行すると“かゆみ”“湿疹のようなものができる”“焦げ茶色の色素が増える”などが見られ、さらに進行すると、皮膚や脂肪組織が硬くなる脂肪皮膚硬化症を起こし、やがて皮膚がただれてくずれる皮膚潰瘍に至ります」(榊原医師=以下同)

 記者は足のむくみが普段からひどい。榊原医師は「むくみ外来」を担当しているが、むくみで来院し、検査の結果、下肢静脈瘤が見つかるケースは珍しくないという。

「むくみの原因のひとつに下肢静脈瘤があると考えてください。下肢静脈瘤以外にむくみから深刻な病気が見つかる場合がある。むくみがあれば専門医を受診すべきです」

■むくみを診るのは血管外科

“専門医”とは、血管外科医。整形外科や皮膚科を受診する人が多いが、むくみは全身疾患による症状なので、全身を診られる血管外科医がベターなのだ。

 榊原医師の診察はまず、親指でふくらはぎを5秒間強めに押し、手を放した後にへこみが戻るかどうかをチェック。記者の場合、30秒経っても完全にへこみが戻らなかった。次に、立った状態で膝の裏や足の付け根の静脈を超音波で検査。静脈の太さが5ミリ以上あり、弁逆流があれば、下肢静脈瘤が考えられる。

 結論から言うと、記者は下肢静脈瘤ではなかった。しかし、むくみは超音波でも確認された。

「むくみがあり、下肢静脈瘤ではない場合、朝はスッキリしているが、夕方以降ひどくなる人は一般的に、飲酒も含めた水分の取り過ぎ、運動不足、肥満が原因。医療用の『弾性ストッキング(足を圧迫する医療用靴下)』を日中はき、適度な運動や肥満解消で改善する可能性が高い。ただし、心臓や腎臓の機能不全の疑いもあるので、それらの検査は必須です」

 一方、むくみはあるがふくらはぎを指で押してもへこまないようなら甲状腺機能低下症。リンパ節も一緒に取る外科手術後に出るへこまないむくみはリンパの流れの滞るリンパ浮腫が疑われる。

 もし、下肢静脈瘤なら? 弾性ストッキングに加え、レーザーやラジオ波で静脈瘤ができている血管を熱で焼き、血管を閉塞する治療法などがある。保険適用だ。

 さらに東京血管外科では、人体に害のない接着剤を注射器で血管内に入れ、静脈の血管壁をくっつけて血液の流れを遮断し血管を塞ぐ「スーパーグルー治療」を保険適用外で行っている。

「レーザーやラジオ波で見られるような皮下出血や痛みがなく、治療時間は約15分で終わり、海外では昼食時に受ける人も。治療後ジョギングも可能なほど、患者さんへの負担が少ない」

 下肢静脈瘤ではなかった記者は、むくみ対策で弾性ストッキングを着用中。はいたその日から足が疲れにくくなった。年を取ると下肢静脈瘤を発症しやすくなるが、弾性ストッキングはその予防にも役立つ。

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