後悔しない認知症

過去に親しんだテキストをもう一度、引っ張り出してみよう

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 このエピソードが示すように、高齢者は自分の好奇心を常に大切にし、機嫌よくそれを満たすように行動すべきだ。認知症の予防、進行の抑制に大いに役立つ。子どもはそのことを忘れないほうがいい。認知症であるかないかにかかわらず、読書、音楽、スポーツ、各種の娯楽など、親の好奇心の芽を摘まないように心がけるべきだ。将棋、囲碁、麻雀はもちろん、生活に支障をきたさなければ、趣味程度の競馬、競輪などの公営ギャンブルも無理にやめさせる必要はない。現在、大きな議論となっているカジノは別だが……。

 前回のコラムでも触れたが、現在82歳の漫画家の東海林さだお氏は、認知症研究の第一人者である長谷川和夫氏との雑誌対談(「オール読物」11月号)の中で、認知症予防に有効な「脳を悩ますこと」について語っている。「最近、物忘れがだんだん激しくなってきていて、いつか認知症になるのではないかと不安なんですよ。今はまだ大丈夫だと思っているのですが……」と語った上で、最近、大学受験で使用していた「赤尾の豆単」(「英語基本単語集」赤尾好夫編)で英語を学び直していることを話されていた。「僕らは受験のときに色々なものをとにかく暗記しましたよね。でもそれ以降は暗記をする機会があまりありません。覚える、というのは同時に、忘れないための訓練」だとして、ボケ防止に有効であると語っておられた。漢詩の暗記にもチャレンジされているという。

2 / 3 ページ

和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

関連記事