今年の流行は早い? インフルエンザ対策を専門医に聞いた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 10月4日、国立感染症研究所がインフルエンザの「流行レベルマップ」を発表した。昨年、一昨年より1カ月も早い。沖縄県ではすでに9月の時点で警戒レベルを超えた地域が登場。今年のインフルエンザ対策はどうすればいいのか? 呼吸器内科医で池袋大谷クリニックの大谷義夫院長に聞いた。

「沖縄県では早くにインフルエンザが流行しましたが、それ以降、9月、10月にインフルエンザの流行が急速に全国に広がったという話は聞いていません。インフルエンザの流行は例年通り11月から始まり、12~3月にピークを迎えるでしょう。ピークに備えて、ワクチン接種をお勧めします」

 ワクチン接種はすぐに効果が出るわけではなく、一般的に2週間後に血中の抗体が上昇するため、12月からのインフルエンザの流行がピークになることを考えると、11月中には打っておきたい。

 大谷院長のクリニックでも、11月に入ってからワクチン接種を開始。院長自身も毎年、ワクチン接種をしている。

「この時季は仕事柄、インフルエンザの患者さんにたくさん接しますが、記憶にある限り、インフルエンザにかかっていません。毎年、できる限りの対策を講じています」

 まず、一日に何度も行うマスクの交換だ。マスクはただつければいいというのではない。マスクの表面にはインフルエンザのウイルスが付着しており、手で触ると、今度は手にウイルスが付着する。

 その手を口や鼻に持っていけば接触感染を起こし、また、ドアノブ、電話、スマホ、パソコンのキーボードなど周囲のものに付着させる。それを触れば、さらに接触感染のリスクが高まる。

「マスクを外したら必ず新しいものに交換する。外す時は耳にかけるゴムだけを持つようにし、マスクの表面を触らない。接触感染対策のために、アルコールで手指、そして、周囲のものの消毒を頻繁に行っています」

 次に、ウイルスが生存しにくい環境をつくるため、加湿器で室内の湿度を高める。クリニックはもちろん、自宅でも各部屋に加湿器を設置しているそうだ。

 なお、マスクの着用は、鼻や喉の潤いを保って線毛の動きを良好にし、ウイルスを排出する役割もある。抗菌作用があるといわれるカテキンを含む緑茶もよく飲んでいるという。

■ゾフルーザは1回投与で済む

 もし、インフルエンザを発症したら?

 現在、日本で承認されている薬は5種類。昨年、従来とは違うメカニズムの薬「ゾフルーザ(一般名バロキサビルマルボキシル)」が発売され話題になったが、耐性ウイルスの問題が指摘されている。

「健康な成人では耐性ウイルスが見られる率はそれほど高くありません。また耐性ウイルスが見つかっても、全く効かなくなるわけではない。症状の持続時間が長くなるため、人にインフルエンザをうつしやすくなる。ゾフルーザは1回投与で済み、これはほかの薬にはない特徴です。一方、同じ内服薬のタミフル(一般名オセルタミビルリン酸塩)は1日2回、5日間投与しなければならない。私はゾフルーザ、タミフル双方のメリット、デメリットを話し、患者さんに選んでもらっています」

 なお、ゾフルーザの耐性ウイルスができる率は、小児の場合、成人より高い。日本小児科学会は12歳未満の小児には、積極的な投与を推奨しないとしている。

 保険適用外だが、予防薬として投与が認められている薬もある。

 前出のタミフル、吸入薬のリレンザ(一般名ザナミビル水和物)、同じく吸入薬のイナビル(一般名ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)だ。

 家族に高齢者や慢性呼吸器疾患、心疾患、糖尿病などの基礎疾患患者がいる場合は、検討するのもありだろう。

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