人間はその分解力を有効利用していて、真菌を腸内にすまわせて栄養分を与える代わりにタンパク質をアミノ酸に分解したり、脱水したり、でんぷんをブドウ糖に分解したり、ビタミンを作り出したり、ミネラルを吸収しやすくするよう働かせているのだ。
とはいえ、人間が許容するカビの量はわずか。その増殖は腸内に数多く寄生している細菌により抑制されている。
「大腸や小腸などの腸管には500種類以上の細菌が100兆個います。細菌は腸壁の表面にあるムチンと呼ばれるネバネバの層にいてその様子が草むらに似ているので腸内細菌叢と呼ばれています。それは指紋のように人によって菌の種類や分布が違います」
菌には人間にとって有益な「善玉菌」と有害な「悪玉菌」、さらには善玉にも悪玉にもなりうる「日和見菌」があり、健康なときはそのバランスが取れている。ところが、少しでも悪玉菌が増えると日和見菌はそれに近い働きをするために数%の悪玉菌が増えることで、結果的に数十%の変化が起きるという。