Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

免疫療法&放射線注目「アブスコパル効果」より高めるには

京大・本庶佑特別教授の研究でオプジーボ開発が実現(C)共同通信社

 甲状腺の未分化がんは治療法が確立していなくて、極めて予後が悪い。この結果を受けて、米国では甲状腺未分化がんに対する免疫チェックポイント阻害剤と放射線を組み合わせた臨床試験が複数行われています。

■種類は問わない

 なぜそんな効果が得られるのでしょうか。がん細胞は、免疫から攻撃されないようにブロックする仕組みを備えているのですが、放射線を照射すると、がん細胞の免疫ブロックを破り、免疫がしっかりと機能し、がん細胞を叩くリンパ球が増える可能性があることが分かりました。がん細胞攻撃の指示系統も、しっかり機能するようになることも分かっています。

 そうしたことから、アブスコパル効果をより高めるには、免疫チェックポイント阻害剤で免疫を底上げしてから、放射線を照射するのがいいとされます。大阪大で行われた非小細胞肺がんに対するオポジーボと放射線を組み合わせた臨床試験でも、オプジーボを2週間ごとに静脈内投与し、投与から7日以内に局所放射線治療を加えていました。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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