病み患いのモトを断つ

芸能界で発症続出 脳卒中の明暗を分ける「3つの条件」とは

48歳の若さで他界した桂三金さん(左)と早期治療が幸いした加山雄三さん
48歳の若さで他界した桂三金さん(左)と早期治療が幸いした加山雄三さん(C)日刊ゲンダイ

 明暗を分ける結末だった。8日午後7時ごろに自宅で体調不良を訴えた歌手の加山雄三さん(82)はすぐに受診して脳梗塞と判明。点滴治療で快方に向かっている。しかし、翌9日に自宅で倒れた落語家の桂三金さんは病院に救急搬送されたものの、脳幹出血で帰らぬ人に。48歳だった。血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血とでは全く異なるが、何が生死を分けたのか。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器専門医)に聞いた。

 ともに高血圧がリスク因子として大きい。特に三金さんは身長168センチながら、体重120キロの巨漢。桂一門の関係者によれば、「彼ほど太っていることを芸として確立した人はいない。(太るために)無理して食べていたこともあったのではないか」と語る。

 4月20日の自らのブログでは、奄美大島を訪問した際のことを投稿。初日は、空港に着いてからヤギ乳ソフトクリームを食べて、奄美名物の鶏飯を楽しみ、島豆腐屋へと、ランチでハシゴ。翌日は、朝から本マグロステーキと、かなりの食欲ぶりがうかがえる。

「三金さんは仕事柄、食べることが大事だったのかもしれませんが、それならなおさら血圧の管理が大切だったと思われます」

 そう言う桑島氏は、朝の発症時刻に注目する。

「血圧は一日の中で変動していて、寝ている間に下がって起床して活動すると上昇します。ところが、高血圧の中には、夜間に下がらず高いままのタイプもある。特に11月は最低気温と最高気温の気温差が大きく、朝の寒さを感じると、血圧上昇のカーブが急になりやすい。三金さんが夜間の血圧が下がらないタイプで朝の気温が低かったとしたら、リスクが重なり、危ない。朝は、しっかり防寒してから外出することです。低温のストレスがよくありませんから」

 発症前日の大阪は、最低気温13・1度、最高気温19・4度だったが、発症日の最低気温は前日より4度低い9度。前の日の最高気温との温度差は10度に上る。

■長嶋茂雄氏とオシム氏の違い

 では、加山さんの“勝因”はなにか。桑島氏は、搬送先の病院で受けた点滴治療に着目してこう言った。

「加山さんが点滴で受けたのは、t―PAと呼ばれる血栓を溶かす治療だと思われます。この治療の適応は、発症から4時間半以内。その時間内なら、血流が完全に回復して、症状がすべて解消することもまれではありません。劇的な効果のある治療でも、モタモタしていると、その恩恵にあずかれないのです」

 今月16日に予定されているコンサートは、来年1月15日に延期。その復帰に向けて治療に励んでいる。早期発見の加山さんは軽くて済んだが、治療が遅れると、大変だった恐れがあるという。

「82歳の年齢を考えると、加山さんを襲った脳梗塞は、心臓にできた血栓が脳に流れて詰まらせる心原性脳塞栓でしょう。そうだとすれば、長嶋茂雄さん(巨人終身名誉監督)とオシムさん(サッカー日本代表元監督)を苦しめたタイプと同じです。t―PAが保険適用されたのは2005年。長嶋さんの発症はその1年前で、オシムさんの発症は2年後でした。t―PAを受けられたかどうかの違いは大きい。心原性脳塞栓は治療が遅れると、重いマヒが残りやすいばかりか、呼吸中枢が詰まると、致死率が高い」

 厄介な心原性脳塞栓の原因が、心房細動と呼ばれる不整脈。高血圧の治療だけでなく、不整脈の治療も重要だという。

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