後悔しない認知症

「こんなになってしまって…」と嘆く親の鬱にどう接するか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 そんな親を前にして、子どもはどう対応すればいいのだろうか。

 第一に心がけることは「こんなになってしまった親」を100%受け入れることだ。「もう諦めろ」というのではない。このコラムでもたびたび述べてきたように、日光浴、散歩、肉などのタンパク質の摂取など、進行を抑えるための日課は重要だが、ともに重要なのが、「こんなになってしまっても、あなたが必要だ」というメッセージを子どもは親に対して発信し続けることだ。

 そのためには「昔話」も有効だ。親が自分たちを育てるためにやってくれたこと、親子で旅行に行ったときのことなどを話しながら、いかに親が自分たちにとって大切な存在であるかを改めてアピールするのだ。そうしながら、親とコミュニケーションの時間を持つ。親の記憶が不確かであっても、話を聞いてあげること。間違っていたとしても「そうだったかな」「言う通りかもしれないね」といった相づちにとどめる。コミュニケーションによって親が愉快な気分になるようにすることが重要だ。さらに重要なのは「生きていてくれるだけでうれしい」「いなくなったら悲しい」という自分の気持ちを伝えることだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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