がんと向き合い生きていく

認知症の母親に胃がんが発覚…それでも母は私の生きる希望

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 そして、こう書いています。

「医者が任命されたのは、できる限り命を救い、できる限り助け、そしてもう治せないときには看護するためではなかったでしょうか。医者である限り、彼は不治といわれている、あるいは実際、不治である患者に生きる価値があるとかないとかについて、判断を下す権利はないのです。また、その権利があると思い上がっては決してならないのです」

 私から見て、母は心も体も苦痛があるようには見えません。きっと自分では何も分かっていないのです。それでも、母は私の生きる「希望」なのです。母には、このままでもいいから、認知症でいいから、ずっと生きていて欲しいのです。たとえ、母が私を誰だか分からなくなったとしても、ずっとずっと生きていて欲しいのです。

 ◇  ◇  ◇ 

 意味のない延命なんてないのです。

4 / 5 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事