上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

AIを使った心臓分野の診断が実現する日はそう遠くはない

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 こうした先天性心疾患や冠動脈の詰まりは、AIを使った画像解析を導入しやすい病態といえます。臓器に構造的な均一性があるうえ、個体差の少ない比較的安定した画像が得られるからです。

 正常な胎児の心臓の構造は個体差が少なく、弁や血管といった部位はほぼ同じ位置にあります。成人の心臓も大きさはほぼ一定ですし、冠動脈の本数も大きくわけて3本で、4本も5本もある人はいません。直径についても3~6ミリ程度の違いだけで、細い人は最初から細いままで途中から太くなるようなことはありません。いずれも正常な状態がある程度決まっているため、取り込んだデータから“異常”を検知しやすいのです。

■心房細動で活用するための研究を進めている

 順天堂医院でもAIを使った心房細動の診断ができないかどうかを模索しています。高齢化が進む日本では、60代の2%、70代で4%、80代になると8%が心房細動を発症するといわれていて、これからますます患者さんが増えるのは間違いありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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