薬が効いて、腫瘍がCTなどの画像に写らなくなった状態を「完全寛解」といいます。また腫瘍の長径・短径の合計が、治療前の3分の1以下に縮小すれば「部分寛解」といわれます。腫瘍を球形と仮定すると、半径が3分の1以下(体積にして27分の1以下)になった状態です。そして治療を受けた患者のうち、完全寛解もしくは部分寛解に至った患者の割合を奏効率と呼ぶのです。完全寛解に至る患者はごく少数ですから、実際には「奏効率≒部分寛解率」となります。奏効率30%とは、治療を受ける患者の30%が部分寛解を得られるという意味です。
残り7割は部分寛解に至らないわけですが、しかし腫瘍がある程度縮小する、あるいは大きさが変化しない状態になる場合もあります。それが4週間以上続くと「安定」と呼ばれます。その間、進行が抑えられるので、それだけ延命が期待できますし、がんによる症状を緩和できるかもしれません。安定を加えたものを「病勢コントロール率」と呼びます。1次治療の病勢コントロール率は、70%前後といわれています。
大腸がん<5>切除不能進行再発の抗がん剤治療は5段構え
- 2019年11月21日
大腸がん<7>薬物療法の延命効果「生存期間中央値」は?
- 2019年11月26日
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。