漢方の意外な実力

「小青竜湯」は鼻炎症状の6割を改善 花粉症にも効果的

体内の水分バランスの異常
体内の水分バランスの異常

 スギ花粉症というと、多くの方は春をイメージするでしょう。スギの花粉は例年、2月のバレンタインデー前後に飛散が始まり、4月にかけてピークを迎えます。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、涙目などに悩まされる患者さんがたくさん受診されるのも、このころです。

 しかし、敏感な方は12月ごろから症状が出始めます。忘年会シーズンに花粉を感じて、「鼻がムズムズしてきました」と来られる方は、少なくありません。

 そんな花粉症には、抗アレルギー薬が知られていますが、漢方薬もとてもよく使われます。中でもポピュラーなのは、小青竜湯でしょう。

 漢方薬は、一般に東洋医学でそのときの体質を表す「証」を調べて、証に則したものを処方しますが、小青竜湯は西洋医学的に作用メカニズムが解明されていて、臨床試験で有効性が認められているのです。くしゃみは60~70%、鼻水は40~60%、鼻づまりは50~60%が改善するといわれています。

 花粉症の症状を「体内の水分バランスの異常」ととらえるのが東洋医学です。必要なところにあるべき水分が少なく、特定の部分にたまった偏在です。確かに鼻水や涙目は過剰な水の貯留で、鼻づまりも、粘膜に水分がたまることによる膨張が原因ですから、東洋医学的な説明は納得できるでしょう。

 肝心の小青竜湯は、体を温めて発汗を促して、過剰な水分を発散させ、鼻水や鼻づまりなどの鼻炎症状を改善します。小青竜湯の構成成分の一つである麻黄などに強力な抗アレルギー作用があり、くしゃみも抑えるのです。

 ほかに葛根湯、麻黄附子細辛湯も、花粉症が軽い方に効果があるといわれます。

 先ほど「証」に精通していない西洋医学の医師も、小青竜湯は処方しやすいといいましたが、小青竜湯の症状抑制効果が6割前後なのは、東洋医学的に証が不一致な方に処方されているためとされます。それで小青竜湯が効かない人も、ほかの漢方薬に切り替えると、症状がよく改善されることは珍しくありません。

 漢方薬が優れているのは、抗アレルギー薬のような眠気の問題がないことです。花粉症の方は、漢方内科や漢方に詳しい耳鼻科医に相談するといいでしょう。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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