Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

トレエン斉藤はドキッ バレット食道のがん化リスクは125倍

お笑いコンビ「トレンディエンジェル」の斎藤司さん
お笑いコンビ「トレンディエンジェル」の斎藤司さん(C)日刊ゲンダイ

 ショックを受ける人が今後、続出するかもしれません。18日放送の医療バラエティー番組で、お笑いコンビ、トレンディエンジェルの斎藤司さん(40)が食道がんのリスクを指摘されて、うなだれたと報じられたといいます。そのリスク因子は、日本で広がるとみられているのです。

 報道によると、斎藤さんは食後の胸やけがひどいそうで、胃カメラ検査を受けたところ、バレット食道という特徴的な異常を指摘されたといいます。バレット食道は、逆流性食道炎と密接な関係があり、その逆流性食道炎が肥満の増加に伴って増えているため、バレット食道に由来する食道がんが増えると予測されるのです。

■毎年1回の内視鏡検査で早期発見

 食道がんには、扁平上皮がんと腺がんの2つのタイプがあり、日本では92%が扁平上皮がんです。腺がんはわずか数%ですが、肥満大国の米国ではそれが逆転。8割が腺がんで、扁平上皮がんは2割にとどまります。

 肥満で胃が圧迫されると、胃酸が逆流しやすく、そんな状態が長年続くと、胃の粘膜が食道とのつなぎ目を越えて食道側に拡大。そうやって食道の粘膜の扁平上皮が、胃の粘膜の円柱上皮に置き換えられた状態が、バレット食道です。欧米の研究によると、バレット食道の人は、そうでない人に比べて最大125倍も食道がんになりやすいといいます。

 逆流性食道炎を起こすのは、早食いや食べ過ぎといった食べ方、食べてすぐ寝る習慣も影響。どれも胃と食道のつなぎ目の弁が圧迫され、胃酸の逆流を助長します。そんな生活習慣は、肥満リスクでもあり、肥満をベースに逆流性食道炎からバレット食道、食道がんが関連しながら、増加するでしょう。

 食道がんを根治するなら、手術と化学放射線療法です。化学放射線療法は、手術と同じ治癒率ですが、より適しているのは腺がんより扁平上皮がんといわれます。今後、食道腺がんが増えると、今まで以上に手術が増えるかもしれません。

 食道がんの手術は、外科手術の中でも特に大がかりで、首と胸と腹部の3カ所を開きます。食道を切除すると、食べ物の通り道がなくなるため、胃を細く管状にして喉とつなぐため、手術時間は7~8時間に及びますから厄介でしょう。

 こうした事情から、食道がんも早期発見、早期治療がとにかく大切。そのためには1年に1回の内視鏡検査が重要です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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