後悔しない認知症

「変だ」と思ったら言ってくれる「チェッカー」を持とう!

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 最近、ある会社の「悲劇」を耳にした。その会社は創業者である夫と、70歳を過ぎて関与しはじめた妻が夫婦で経営していたのだが、数年前からそろって認知症の症状が表れはじめた。これまで一度も医者の診断を受けたことはない。現在、ともに87歳だが、物忘れがひどく、理解力の劣化も著しい。「3分ですむ報告、確認に3時間かかる」と社員は嘆く。その報告、確認もすぐに忘れてしまう。認知症特有の性格の先鋭化も進み、社員に対する罵倒は日常茶飯事、次第にブラック企業ぶりが目立ち始めているという。だが、2人には子どもはいないし、数年前まで会社に在籍していた親戚も退社した。それとなく認知症検査を勧めたことが2人の不興を買ったらしい。彼らには、「変」を指摘してくれる「チェッカー」がいないのだ。社員は気の毒としかいいようがない(もっとも、どこかの権力者のように「チェッカー」を敵視、排除する人間は多いのだが……)。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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