Kさん(70歳・男性)は、胃がんの手術を受けた後、1年間の抗がん剤内服も終わり、再発なく元気です。それでも手術前より8キロ減った体重は戻らないままです。昨年は奥さんに先立たれ、いまはひとり暮らしです。
以前から高血圧があって降圧剤が処方されているため、2カ月に1回のペースで外来に来られます。そのKさんがこんなお話をされていました。
「私の家の隣に94歳の男性がひとりで暮らしています。先日、縁側で日なたぼっこをしていて意識を失っているのが見つかり、救急車で病院へ運ばれて点滴注射を受け、復活したそうです。熱中症だったのでしょうか。ただ、本人はそのまま死にたかったようで、仏壇には遺書が置いてあったらしいのです。あのまま死なせてあげることはできなかったものですかね? あの人は人付き合いが悪いんですが、以前、私に『自然に死にたい』と漏らしたことがあったんです。あのまま死なせてあげたかった気もするんですがね。今は病院から家に戻って、ケアマネさんが入って、時々ヘルパーさんに来てもらっているようです」
がんと向き合い生きていく